
ヴィンテージ 代表取締役 郷田和正氏によれば、そもそも同社が社会福祉協議会向けのソフトウェアを開発したのは、地元である北九州市からの依頼がきっかけだったといいます。
「もともとSI事業の一環として、北九州市の社会福祉協議会のお手伝いをさせていただいていたのですが、現場の方々の業務を間近で見るにつけ、『ITをうまく使えばもっと仕事を効率化できるのではないか?』と感じていました。そこで北九州市に提案を行い、社会福祉協議会における成年後見や日常生活自立支援、あるいは日々受ける相談の管理といった主要業務を支援するシステムを開発・提供しました」
社会福祉協議会とは、市町村ごとに設けられている民間団体で、各地域ごとの福祉や災害ボランティアなどの普及推進や実際の担い手としての役割を負っています。中でも特に主たる業務といえるのが、意思能力に衰えが見られるお年寄りの財産の管理や契約行為を本人に代わって行う成年後見制度の運用や、地域のお年寄りや障がい者、生活困窮者の自立支援、またそうした人々やその家族から寄せられる相談の窓口としての役割です。
こうした業務においては、支援を受ける対象者一人ひとりのプロフィールや支援活動の履歴を逐次アップデートしながら管理していく必要があります。従来はこれを紙ベースで行ってきましたが、手間が掛かるのはもちろんのこと、近年では福祉分野における人手不足が深刻化しており、ITの活用による業務効率化がさかんに提唱されています。
そんな中、全国の他の社会福祉協議会でも北九州と同じような業務課題を抱えているのではないかと郷田氏は考えたといいます。
「幾つかの地方自治体にお話をうかがったのですが、やはりどこも北九州市と同じような課題を抱えていることが分かりました。しかし、当時私たちが開発した北九州市向けシステムは、北九州市のニーズに特化して開発したため、そのままでは他の自治体には適用できません。そこで、より汎用的な仕様のパッケージ製品を開発し、これを基に各社会福祉協議会のニーズに合わせてカスタマイズを行う方法で全国展開に乗り出しました」(郷田氏)
こうしてロイヤーズONEは全国各地の社会福祉協議会で採用が進み、現在では福岡や名古屋、静岡といった大都市、あるいは東京都内23区のうち5区で既に導入されており、その数は現在でも増え続けているといいます。