導入事例

サーバー600台の安定稼働を実現!金融・官庁を支えるHENNGEの技術革新

HENNGE株式会社 様

1996年の設立以来、30年近くにわたってIT業界の変遷を先導してきたHENNGE(旧HDE)。 同社のメール配信事業は携帯キャリア向けの大規模メール配信から始まりました。クラウド化の波と共に大きく進化を遂げ、現在はオンプレミス時代からの知見に基づくエンタープライズ向けクラウド型メール配信サービスを提供しています。 今回はクラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud」の開発を手掛けた同社の事業部長、大久保正博さんから、これまでの技術的な挑戦とメール配信サービスの現状、今後の展望についてくわしく聞きました。

課題
顧客の厳しいセキュリティ要件に応えられるクラウド基盤の選定
従前基盤で発生していたDDos攻撃によるサービス品質の低下
従前基盤の仕様制約。サーバー利用数の上限などで事業拡大に追いつけない
効果
金融・官公庁の要求に応えられるクラウドサービスの提供が可能に
さくらのクラウドのトラフィック分散処理で安定したサービス品質を実現
さくらのクラウドの活用により拡張性と機敏性を確保

オンプレミス時代の大規模メール配信技術

当社の設立は1996年です。PCからインターネットに接続できる環境が整い始めた頃……いわゆる「IT革命」の時期に創業しました。現在では当たり前の「自社のWebサイト」や「従業員のメールアドレス」などが普及しつつあり、企業のITシステムを安価に構築するLinuxの管理コンソールの開発・提供から事業がスタートしています。

HENNGE株式会社 Messaging Business Division / Division Manager 大久保 正博 氏

私が入社した2009年頃は、携帯電話の使い方に変化が起きていました。携帯キャリアでのeメールの送受信が広く利用されるようになったことから、国内の携帯電話キャリアに対するメール配信量が爆発的に高まった頃です。

当時、携帯キャリアにメールを届けるのは、本当に大変な作業でした。国内キャリアのドメインは3つ。そこにeメールが集約され、1つのドメインが受信するメールは、相当な規模のメール数になることが想像できるかと思います。そこに対して安定的にメールを届けるためには、1つのIPからバーストトラフィックが起きないよう送信側で制御するなどの工夫が必要でした。

「セキュリティ」と「安定性」が最重要項目だったクラウド移行

その後、クラウドコンピューティング技術が普及し、多くの企業でオンプレミスからクラウドへのシステム基盤の移行が進みました。そのなかで、クラウドから利用できるメール配信サービスへの需要が高まり、クラウドから簡単・確実にメールを送付できるフルマネージドサービス型のSaaSとして、2016年に「Customers Mail Cloud」(以下、CMC)をリリースしました。

CMCは、とくに金融や官公庁系など、厳格なセキュリティ要件から「脱オンプレ」が難しかった分野に対応しています。

安全に、確実にメールをお届けするには、DKIM、DMARCといったなりすまし対策はもちろん、受信側で不審なメールだと誤解されないようなIPアドレスを使う必要もありました。IPアドレスは、受信側が信頼性を判断する大きな要素の1つです。とくに、海外のクラウドベンダーが所有するIPからのメール送信は受信拒否されてしまうこともあります。メールを確実に届けるには、信頼性の高いIPを持つ、国産IaaSの利用が必要でした。

「急成長への対応」で手応え

じつは、CMCのリリースを始めた当時は、さくらのクラウドではないIaaSを利用していました。しかし、事業拡大のペースがとても速く、グロースアップに伴う「脱皮」が必要になりました。

CMCは2016年のリリースから導入企業が増え続けています。当初、数十台規模から始まったサーバーの数は1年ごとに1.5倍のペースで増えていました。しかし当時のサービスでは、サーバーの利用台数に上限があり、CMCの利用者拡大に追いつけなくなっていたのです。そこでインフラの再選定を計画し、いくつかのサービスを比較検討したうえで、さくらのクラウドを採用しました。

当社サービスの機能要件および事業規模に対応できる国産IaaSという観点では、さくらのクラウドが「ほぼ一択かな」と感じてはいたものの、ネットワークの安定性などは使ってみないとわかりません。そこで、1年程度かけて検証もしました。ただ、触り始めた当初から好印象でした。「仮想マシンをテンプレートから立ち上げる」や「IaC(コードでのインフラ立ち上げ・設定)」といった作業も非常に高速で、それでデプロイしたサーバーのCPUやメモリの割り当てもスマートです。

また、検証を始めた時期に北海道胆振東部地震があり、石狩のデータセンターが非常用電源で運用されたのを見ていました。当社のサービスは本番稼働していませんでしたが、真摯な対応に感銘を受けました。

それで、「このインフラであれば、既存のサーバーをすべて移行しても大丈夫だろう」と判断し、2019年に全システムを再構築しつつ、さくらのクラウド上に移行しました。

始めやすさ、使いやすさ、安定性を実感

さくらのクラウドは、ネットワーク、ストレージ、サーバーとオンプレミス感覚で利用できるのでわかりやすく、またマニュアルも充実していました。十分に検証したあとだったこともあり、導入に際しての問題はとくにありませんでした。

その後、OSのメジャーアップデートがあり、約400台程度のサーバーに対してOSリプレースをしました。サービスが停止しないような計画を立て、新しい仮想マシンを立ち上げ、データだけ移管して、サーバーを切り替える……その繰り返しの作業をおこない、2か月ほどでリプレースを完了できました。

IPのレピテーションの問題も発生しておらず、ネットワーク自体もとても安定しています。 さくらのクラウドを使い始めてから、ネットワークでトラブルが起きたことは一度もありません。

前サービスではDDos攻撃の影響を受けるのも悩みでした。現在も同様の攻撃はあるのでしょうが、さくらのクラウドはうまくルーティングして、トラフィックを分散させてサービスに影響しないようにする……といった工夫がされているのを感じます。こういった影の努力がたくさんあって、この安定性・可用性が実現されているのでしょう。 

現在、運用している仮想マシンの数は600台を超えています。そうすると、どうしてもホストサーバーなどハードウェアの故障といった問題は出ます。しかし、さくらインターネットからは物理機器の故障を予測して予防措置としてのメンテナンス通知をいただくことがあります。そのおかげで、サービスに影響が出る前に対応でき、それで高い可用性を維持できています。

もちろん、われわれとしても、石狩と東京のデータセンターを拠点利用し、データセンターレベルで障害があった場合でも、サービス提供が全停止に至らないようなサービス基盤を設計・構築しています。

メールセキュリティの現状と今後の展望

セキュリティに厳しいあまりクラウド化が遅れ、オンプレミス環境で10年前のメールサーバーを運用しているような企業もあります。しかし、当時のメールソフトウェアには電子署名機能がないため、なりすまし対策であるDKIM対応ができません。DMARC、DKIM、SPFといったメール認証技術の普及は、メール事業者としての使命だと考えています。

eメールは、50年以上の歴史を持つプロトコルです。インターネットのアプリケーションレイヤーで、これほど長期間使われ続けているのはSMTPとHTTPの2つだけでしょう。HTTPと同等の規模と歴史を持つメールを、安全に使い続けていくことが重要だと考えています。

さくらのクラウドはISMAPサービスリストに登録され、ガバメントクラウドにも認定(※)されています。こうしたIaaSを基盤として活用することで、官公庁や自治体により安心してご利用いただけるメール配信サービスを提供できると考えています。

さくらインターネット、ガバメントクラウドサービス提供事業者に選定(2025年度末までに技術要件をすべて満たすことを前提とした条件付きの認定)

「クラウドは、難しくない」

当社も以前は、データセンターのラックをお借りして、自社のインフラエンジニアがネットワーク機器やサーバーを運用していました。ハードウェア故障の対応や、保守切れ対応、機材搬入、ラックへのキッティング、ケーブル結線など、運用負荷は非常に大きなものでした。エンジニアとしてはこういった経験も貴重ですが、かといって今から自社用にオンプレミス環境を構築するのは、もう現実的ではありません。

さくらのクラウドは、オンプレミス環境に近い使いやすさがあると思います。日本語マニュアルも充実しており、学習コストが低く抑えられます。「クラウドは難しい」と気負う必要はありません。

導入を検討するのであれば、まず既存のデータベースサーバやWebサーバをリフト&シフトで移行してみてもいいかもしれません。それだけでも、クラウドの利便性を実感できるはずです。

導入のご相談(無料)
構成についてのご相談や、詳しい料金のご案内をご希望の方は
お気軽にお問い合わせください。
ご相談はこちらから
HENNGE株式会社
事業内容
企業向けSaaS認証基盤(IDaaS)「HENNGE One」、および、Eメール配信に関するSaaSを提供
設立
1996年11月5日

導入事例集

さくらインターネットのサービスを
導入・活用いただいている
お客様の事例をまとめた資料を配布しております。

無料ダウンロード

導入のご相談(無料)

構成についてのご相談や、
詳しい料金のご案内をご希望の方は
お気軽にお問い合わせください。

ご相談はこちらから