導入事例

オンプレミス仮想基盤での障害をきっかけにSINET5に接続可能なクラウドサービスに移行

国立遺伝学研究所 様

国立遺伝学研究所では、2012年から所内に構築した仮想基盤で各研究室のWebサイトなどを運用していましたが、2016年にディスク障害が立続けに発生し、一部は復旧不可能な状態にまで至ってしまいました。 そこで従来の仮想基盤環境と同等以上の帯域やハードウェアリソースを確保可能なクラウドサービスとして、「さくらのクラウド」を選択し、オンプレミスの仮想基盤からの移行を実施しました。

課題
老朽化に伴う仮想基盤全体の更新
SINET5との接続環境整備
IPアドレスやドメインの継続性、費用・運用コストの低減
効果
メンテナンスが楽になった
停電対策が不要になった
コスト削減に加え、今後柔軟に規模を変えていける

オンプレミスの仮想基盤でデータ消失を伴う障害が発生

国立遺伝学研究所
生命情報研究センター
生命ネットワーク研究室
教授
有田 正規 氏

国立遺伝学研究所(以下、遺伝研)では、2012年に遺伝研内のサーバー室において仮想基盤を構築しました。2ラック分のハードウェアを用意し、ストレージはRAID5で冗長化、仮想システムにはVMwareを使いました。遺伝研の各研究室はこの仮想基盤が利用でき、無料のホスティングサービスのように機能していました。この仮想基盤上では各研究室のWebサイトなどが10数台稼働していましたが、老朽化に伴い2016年に同時多発的にハードディスクが故障する障害が発生し、一部はデータ消失にまで陥りました。
 この障害をきっかけに遺伝研では本格的にシステムリプレイスの検討を始めます。「最初はハードウェアリプレイスを検討しましたが、初期投資が大きいことが問題となりました」(遺伝研 有田氏)。
 加えて、遺伝研の場所は伊豆半島の付け根、三島市の東海道新幹線のトンネル出口に近いところです。この場所は落雷が多く2017年5月には落雷による大規模停電も発生しています。「遺伝研内にはスーパーコンピューターもありますのでもちろんUPSを設置して使ってはいるのですが、雷が落ちると瞬電が発生します。停電や瞬電によるリスクは避けたいところです。外部のクラウドサービスを利用すれば、停電のたびにシャットダウンする必要はなくなりますし、電源断が発生するような環境だと、きちんと運用していても一定数のディスクは壊れていくものです」(有田氏)。

SINET5に接続できる国内データセンターを検討

遺伝研ではシステムリプレイスにあたり、クラウドサービス各社の比較・検討を行いました。必要要件はデータセンターが学術情報ネットワーク「SINET5」に接続できることに加え、遺伝研とデータセンター間で1Gbps以上の帯域を確保できることです。遺伝研はSINET5に20Gbpsの帯域で接続しており、SINET5ネットワーク網を介して世界のインターネットに接続しています。「日本の研究を支えるという観点から、国内の事業者であることと、国内のデータセンターのサービスを優先して選択しました。SINET5に接続可能な業者の中でも、さくらインターネットさんが一番良かったです」(有田氏)。
 さくらインターネットでは協力会社による構築サービスも提供しています。本案件ではこのサービスを利用し、さくらインターネットへの発注範囲において、ビットスター株式会社(https://bitstar.jp/)がさくらのクラウド上での環境整備などを担当しました。「今回の移行では、既存の仮想基盤で動いていた仕様そのままに、提供していたすべてのサービスをさくらのクラウドへ移行しました」(遺伝研 奈倉氏)。

外部サーバーの利用でも自らのIPアドレスゾーンで運用

本案件の一番の特徴は、遺伝研が所有するIPアドレスゾーンでクラウドサービスを利用できている点です。「遺伝研は共同利用機関ですので、遺伝研としてサービスを行いたいです。IPアドレスが遺伝研のものでないと『ほかの場所で我々のサービスが行われているのですか?』と問い合わせがくることも考えられます。利用者には遺伝研のサービスであるというところをはっきりさせておきたいです」(有田氏)。
 ネットワーク構成は、さくらのクラウド上のセグメントと遺伝研内のセグメントを高速なSINET5のネットワーク網を介してL3ゲートウェイで接続しています。さくらのクラウド上の仮想マシンは、遺伝研内部にある既存のハードウェアルータにおいてIPアドレスマッピングがなされており、IPアドレスの見かけ上は遺伝研へのアクセスとなる仕組みです。

さくらのクラウド上で運用を開始した「ゲノムデータ解析支援センター」(https://genome-info.nig.ac.jp/)のサイト。
IPアドレスのゾーンは従来から研究所が所有する133.39.0.0/16のままとなっている

運用コストの削減をセキュリティ対策業務へ

技術課
情報基盤支援チーム
奈倉 雅彦 氏

今回のクラウドサービスへの移行によって費用面でも運用面でもコストは下がりました。「一番のメリットはハードウェアの老朽化を心配する必要がなくなることです。死活監視も簡単になります。これまでハードディスクは自分たちで交換していましたので、その作業がなくなった分、セキュリティ対策に割ける時間が増えます」(奈倉氏)。「昔と比べるとセキュリティ対策にかける時間が圧倒的に増えています。仕事は増えているのに人手は減らさなければならない。そうするとハードウェア点検の時間をセキュリティ対策に当てていかないと対応できません。これからサーバー構築の案件があった際は、できるだけさくらインターネットさんのサービスを使うなど、研究所のデータセンター内のハードウェアの量をできるだけ減らしていくというのが重要だと考えています」(有田氏)。

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国立遺伝学研究所
事業内容
遺伝学に関わる研究、研究基盤整備、教育・人材育成
設立
1949年