- WEBサービス&アプリ提供者
株式会社ALiNKインターネット
tenki.jpで「さくらのクラウド、専用サーバ、ウェブアクセラレータ」を採用。予期できないアクセス増に対応
- クラウドサービス(IaaS)
- 専用サーバーサービス
- CDNサービス
株式会社カラーと株式会社グラウンドワークスは、株式会社effectiveの技術協力を得て、さくらのクラウド上に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のプロモーション環境をわずか2カ月弱で構築しました。大量配信が予想されるシステムを驚異的な短期間で構築できたのは、さくらのクラウドだったからこそ可能だったという声を紹介します。
2020年6月公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を製作・制作し、東宝・東映と共同で配給する株式会社カラー(代表取締役社長は総監督の庵野秀明氏)と『エヴァンゲリオン』のライセンス管理およびキャラクター商品化等を行っている株式会社グラウンドワークス。この2社は、本作品のプロモーションのために開発したスマートフォンアプリ「EVA-EXTRA」の制作において中心的な役割を果たしました。
しかしアプリ配信は初めての試みであり、様々な関係者に相談したところ、東映の紹介で株式会社effectiveが参加することになりました。
effectiveがプロジェクトに参加したのは2019年4月中旬。「EVA-EXTRA」の公開は7月1日に行うことが必須要請であり、アプリ登録のための審査期間を考えるとすでに2カ月を切っていました。しかもアプリの詳細な仕様はほとんど未確定という状況でした。
大人気作品の『エヴァンゲリオン』シリーズに関連したアプリですから、公開すれば大量のダウンロードが見込まれます。アプリを通じてムービーを配信することも企画していたので、通信量が膨大になるのは明らかでした。
そのため大量通信を高速に行える高性能なサーバが必要でした。しかもプロモーション用ですからアクセスが集中してもダウンしない堅牢性も求められ、またサービス公開のタイミングにアクセスが集中するため、柔軟なスケーリング(拡張・縮退)が可能でなければなりませんでした。
このような環境を自社内に用意するのは現実的ではなく、必然的にクラウドが選択されることになります。問題はどのクラウドサービスを利用するかでした。一般的にクラウドでは自社環境よりも短期間に環境構築できますが、それでも少なくとも1カ月程度の期間が必要となります。アプリ開発の時間を考えると、1カ月もの猶予はありませんでした。
そこでグラウンドワークス代表取締役の神村靖宏氏は、別の仕事で関係があったゲヒルン株式会社(さくらインターネットのグループ会社)の石森大貴代表取締役に状況と要望を説明し相談したところ、さくらインターネットを紹介されました。そしてさくらインターネットがお勧めしたのが「さくらのクラウド」でした。
環境構築を担当したeffective 取締役 CTO 磯貝重之氏は、さくらのクラウドは初めてだったので、石森氏にアドバイスを依頼しました。「結局、具体的なアドバイスを受けたのは運用用のアカウント作成時ぐらい。あとは驚くほどすんなり環境構築ができ、わずか2日で完了しました。このおかげで、2カ月弱で「EVA-EXTRA」を開発することができたと言えます」(磯貝氏)
磯貝氏は、設定画面がシンプルでわかりやすいことが成功要因だったと評価しています。さくらのクラウドは見てすぐわかる画面でサーバ構成を設定できます。そのため構成図を描く感覚で、試行錯誤しながら設定ができます。他のクラウドでは、設定値が多岐にわたり、サーバのスペックなど詳細に設定する必要があるため、かなり慎重に作業を進める必要があると磯貝氏は言います。「構成図を作る必要がなく、管理画面で現在の構成を確認できるので、ドキュメントと現実の構成が食い違うことがありません。そのため保守も簡単です」(磯貝氏)。
スケーリングの実行も簡単です。マウス操作だけで簡単に仮想サーバを増やすことができます。他のクラウドでも、コマンドで仮想サーバのコピーを作ることはできますが、その際にIPアドレスがそのままコピーされます。そこで手作業で新しいIPアドレスを設定する必要があるのですが、さくらのクラウドではIPアドレスを変更するのも管理画面上で簡単に設定変更が可能です。
『エヴァンゲリオン』のファンは日本だけでなく、海外にもたくさんいます。海外向けのCDN(コンテンツデリバリネットワーク、配信処理をサーバに代わって実行するサービス)にはAWS CloudFrontを採用しました。
「最近では複数のクラウドを組み合わせた環境構築も当たり前に行われています。ない機能は別のクラウドと組み合わせ活用する、その際の設定が簡単かどうかが重要です」(磯貝氏)
「EVA-EXTRA」は公開から1日で10万ダウンロードを記録しましたが、まったく問題なくアプリ配信を実行できました。公開直前の機能追加によりサーバを拡張しましたが、約20分で移行が完了したと磯貝氏は言います。
その後「0706作戦」(2019年7月6日に実施された8都市9会場での『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT1(冒頭10分40秒00コマ)』の上映)の実施、既存の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』3作の期間限定無料公開、『シン・エヴァ AVANT1』で使用されたBGM無料試聴企画などで35万ダウンロードに増えました。
「同じ環境に課金システムを構築すれば、アプリによる集金も可能になります」(カラープロデューサー 島居理恵氏)。
「これだけの数のユーザが存在していれば、企業に対してタイアップ企画を持ちかけ、キャンペーンに出資してもらうことも容易です。その際に、『御社でキャンペーン用のサーバを用意しなくても、私たちのサーバを使うことができます』と言えるのはとても大きい。ビジネスのプラットフォームとなる環境が簡単にできあがったと喜んでいます」(グラウンドワークス代表取締役 神村 靖宏氏)。
最後にさくらのクラウドの評価とさくらインターネットに期待することを伺いました。
「設定に時間が掛かっても、細かい機能が網羅されていることを重視するのであれば、AWSのようなグローバルな巨大クラウドサービスのほうがいいかもしれません。しかし日本国内でいち早くビジネスを立ち上げたいのであれば、さくらのクラウドがお薦めです。クラウド初心者にもわかりやすいのが最大の特長でありながら、中・上級ユーザが求めるような機能もほぼ用意されています」(磯貝氏)。
磯貝氏は、さくらのクラウドの現在のスタンスを維持することを希望しています。「今回のように搭載されていない機能は他のクラウドを利用すればいい。さくらのクラウドには変な制約がないので、他のクラウドとも簡単に接続できます。無理に機能を増やすよりも、現在のシンプルさの維持を強く意識してもらいたい」(磯貝氏)。