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超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト
先端素材高速開発技術研究組合が1,024ノードのスーパーコンピューターを「高火力コンピューティング」から利用
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AI(人工知能)を活用した予防ヘルスケアに特化したヘルステック企業株式会社FiNC Technologies(以下FiNC)。同社の事業には、高性能のGPUが欠かせません。GPUサービスは多くのクラウドベンダーで提供されていますし、オンプレミスでの導入も可能です。しかしFiNCでは、多くの選択肢の中からさくらインターネットが提供する「高火力コンピューティング(以下高火力)」を採用しました。その理由背景を紹介します。
AIを活用したヘルステックベンチャーのFiNC。女優・モデルの中村アンさんが出演するテレビCMで、一般的な認知度も大きく高まりました。
FiNCのミッションは、「すべての人にパーソナルAIを」です。これは、FiNCのプラットフォーム本部 技術開発部 VPoEを務める鈴木健二氏によれば、AIというテクノロジーを駆使することで、より多くの方にパーソナライズされたサービスを提供し、健康に関連する様々な課題解決を目指しているということです。
FiNCの主なサービスは以下の通りです。
●FiNCアプリ:ヘルスケア/フィットネスアプリ(詳細は後述)
●FiNCモール:美と健康の商品に特化したECサイト事業
●FiNC for BUSINESS:法人向けウェルネスソリューション事業
●FiNC PLAY:専門家への相談や、優待券が利用できる月額利用サービス など
現在力を入れている事業が「FiNCアプリ」です。「カラダのすべてを、1つのアプリで。」をコンセプトに歩数、体重、睡眠、食事、生理(女性のみ)などのライフログを1つのアプリで記録ができます。FiNCアプリで使われているAIは特許を取得しており、ユーザー一人ひとりにパーソナライズされたアドバイスや健康情報を提供するためのヘルスケアプラットフォームアプリになっています。
健康増進やダイエットの達成のために様々な工夫がなされています。
「グループ内で切磋琢磨しあって目標を達成する仕組みや、ウォーキングや体重記録など健康のためになる行動をするとポイントが貯まり、ECサイトで買い物ができるようになっています。楽しく健康増進に努めていただくため様々な工夫を施しています。」(鈴木氏)。
※日本国内App Store/Google Play「ヘルスケア(健康)・フィットネス」カテゴリにおける1年間(2019年1月〜12月)のダウンロード数の合算です/出典:App Annie
ーFiNCアプリでは、どのようにAIを活用しているのでしょうか。
「代表的な活用例としては、食事の写真を撮影すると、その画像を解析しFiNCが持っているデータベースと照合して、カロリー計算をする機能があります。参考値を提供するものであり、ユーザー側での修正が可能です。修正情報は次の学習データになりますので、ユーザーが使えば使うほど賢くなる機能だと言えます」(鈴木氏)。
また、ECサイトの商品レコメンドやパーソナライズされた健康情報の配信にもAIが活用されています。デモグラフィック情報(性別・年齢・居住地域など顧客の属性情報)と商品や記事の閲覧や購入履歴からAIがユーザーを分類し、最適な情報を届ける仕組みになっています。
FiNCは、外資系の大手クラウドプロバイダーのGPUサービスを利用していました。
これは、利用時間や通信量に応じ使用料を支払うサービスですがスタートアップ支援を受け低料金で利用していました。一方、さくらインターネット(以下さくら)でも高火力のスタートアップ支援を行っていることが分かり、「問い合わせたところ、一定期間の検証期間を用意してくれるという話になったので、他のメリットも検討した結果、高火力を採用することにしました」と鈴木氏は言います。
高火力が時間や通信量を気にせずに使えることが、採用の決め手でした。
「現在は検証期間で利用していますが、月額固定の料金(ただし時間制料金も選択可)なので、時間や通信量を気にせずに使うことができます。これはエンジニアがコスト面を気にせず開発段階で様々な実験をするのに、極めて適した課金形態です。ユースケースがしっかり固まるまで、高火力でAIを開発し、開発したAIをクラウドやオンプレミスに移行するという使い方も選択肢の1つにできます」と鈴木氏は高火力の有効な利用法を説明します。
それまで利用していたクラウドベンダーは利用時間や通信量に基づく課金であり、気にせず開発に集中してしまうと巨額の料金になる可能性もありました。
また月額固定ですと、予算が明確になるというメリットがあります。さらにカスタマイズできる範囲が広いことも高火力のメリットだと言います。「他のクラウドベンダーが提供するGPUサービスは、フレームワークの選択肢が少ないなど様々な制限があります。高火力は専用サーバーとして利用できる形態なので、ほとんど制限がありません」(鈴木氏)。
FiNCが高火力を採用した理由は、他にもあります。
「オンプレミスの場合、システム運用をFiNCで行う必要があります。特に障害が発生した場合、ハードウエアの運用・保守をFiNCで手配することになるので、かなり労力がかかります。その点、高火力はさくら側でこれらの対応をしてもらえます」(鈴木氏)。
さらにオンプレミスですと、償却期間があり、その間のアップグレードが難しくなります。GPUの速い進化をキャッチアップするにはオンプレミスは不利と言えます。
センターとの距離も採用理由の1つでした。米国にあるGPUを利用すれば比通信レイテンシ(遅延)が大きくなります。さくらであれば、センターが国内にあるためレイテンシが小さくて済みます。
「ただ、FiNCにある大量の学習データをインターネット経由でさくらのセンターのGPUから参照するのでは、学習時間が膨大になります。さくらに相談したところ、センター内に学習データを置く専用ストレージを検証用に提供すると提案してくれました」と鈴木氏はさくらのサポートの良さを評価しています。またさくらインターネットグループを挙げて、様々な提案ができることも評価をいただいています。
最近では、海外にストレージがあるとその国から情報開示を求められることがありますが、国内にストレージがあればその対応も必要ありません。
FiNCの主なニーズとGPU利用形態別の満足度を表にまとめました。
このようなニーズは、FiNCのように既にAIを活用したサービスを提供している企業はもちろん、これからAIを活用していくために様々な試行錯誤をしたいと考える企業にも共通するものでしょう。
FiNCは、次のステップとして、ユーザーの行動の変化を解析して適切なアドバイスを送る機能を提供したいと思っています。その後も、FiNCアプリが利用者のヘルスアドバイザーとして欠かせなくなる機能を次々と開発していきますし、さらにFiNCアプリ以外のAIサービスも追加していく予定です。
FiNCアプリをさらに進化させ、FiNCの事業を発展させていくためには、時間や通信量を気にせずに最新のスペックのGPUが利用でき、開発プラットフォームの自由度も高いGPUサービスを今後も選んでいくと思います。