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YK STORES株式会社
表情のビッグデータ化を実現するIoT運用基盤に「sakura.io」を採用
- IoTサービス
福井県敦賀市で、消防設備点検や避難訓練の助成などの事業を営んでいる創電。同社はさくらインターネットのIoTソリューション「IchigoSoda/IchigoJam for sakura.io」の活用により、住宅用火災報知器や火災受信機と連動し、火災発生情報をスマートフォンに通知するIoTデバイス「火守くん」を開発しました。
火災が発生したとき、現場にいなくてもスマートフォンでいち早くその情報を把握できたり、隣接の住民や地域関係者に通知して素早い消火や救助活動につなげたり……。株式会社創電が2018年10月から販売を開始した「火守(ほもり)くん」は、IoTを活用した火災による被害の拡大や二次災害を防ぐための通報システムです。
創電は1993年に設立されて以来、消防設備点検や避難訓練の助成事業などを展開してきた、消防設備および避難訓練の専門家集団。そんな同社がなぜ、IoTによる通知システムを手掛けるに至ったのか。その背景について代表取締役社長の刀根嘉広氏は次のように語ります。
「火事の被害を最小限にするには、初動が大事になります。ですが、避難訓練を毎年行っても、本当に消火器で初期消火ができる人はそういませんし、避難に関しても早くて5分、遅ければ10分かかかってしまうというのが実情でした。そういった初動の遅れによる延焼などの二次災害をなんとかしたいと考えていました」
二次被害を防ぐためのソリューションを検討する一方で、刀根氏は会社発展のため、IoTを使った新規事業を模索していました。「消防や避難といった分野でIoTの活用事例はまだ出ていない。ニーズに合ったソリューションが実現できれば新事業としてチャンスは広がる」──。
そう考え、刀根氏が企画したのが「セーブライフ・ファイアシステム」です。同システムはスマートフォンを使って、火災の発生場所、消火器の配置および避難経路が一目でわかるシステムです。病院や工場などの大規模施設がターゲットで、火災の被害を最小限に抑えられます。
ただ、セーブライフ・ファイアシステムは大規模な仕組みのため、導入するにはかなりのコストがかかります。そこでもっと手軽に導入できるものを開発しようと考え、中小企業のための経営相談所「福井県よろず支援拠点」に相談。地域活性化のための支援事業やプログラミングスクール事業等を営んでいる特定非営利活動法人エル・コミュニティを紹介され、「ここで火守くんの原型を作ってもらいました」と刀根氏。その原型に使われたのが、株式会社jig.jpの「IchigoJam」でした。
「IchigoJam」は低消費電力・低コストのシングルボードコンピュータです。最大の特徴はプログラミング言語にBASICを使っていること。「子どもの頃、プログラミングが好きでBASICでゲームを開発していたんです。これなら私でも開発できると考えました」(刀根氏)
プログラミングでわからないことが出てくれば、jig.jpの福野泰介氏を訪ねて、カスタマイズを繰り返すなか、さくらインターネットから発売されたのが「IchigoSoda」でした。IchigoJamにIoTプラットフォーム「sakura.io」と4G回線で接続できる通信モジュールを搭載したIoTデバイスです。
「Wi-Fiの場合、届かない場所には設置できないというデメリットがありました。IchigoSodaなら4G回線なので、通信環境も安定しています。これしかないと思いました」(刀根氏)
さらにIoTプラットフォームを通信モジュール1台につき月額60円という低コストで利用できること、そして今後の発展性に期待が持てたことも、IchigoSodaを評価した点だといいます。今後の発展性を重視したのは、お客さまのニーズを捉え、必要な機能があれば付加するなど、より付加価値の高いものへと常に「火守くん」を改良していこうと考えているからです。
2018年5月に原型が完成し、そこからカスタマイズを加えて、2018年10月に「火守くん」の販売がスタートしました。「最大の特徴は既設の火災報知器・火災警報器に変更を加える必要なく、簡単に通報機能を追加できる点です」と刀根氏は説明します。
具体的には、火災情報を信号で送信する移報器の無電圧a接点と「火守くん」を接続するだけ。これで火災が発生すると、「火守くん」から通知システムのあるsakura.ioに4G回線で通報が行われ、あらかじめ登録していた人のスマートフォンにSNSで通知されます。
「お客さまからの要望もあり、より利便性を高めるため、緊急通報ボタンも付けました。IchigoSodaであれば、思いついたアイデアをすぐに試せるので、システム作りを楽しんでいます」(刀根氏)
刀根氏を技術的な面からサポートする福野氏は、「私たちはIoTの技術には詳しいですが、本当に役立つIoTシステムを作ることはなかなかできません。刀根さんのように実務に携わっている方にどんどんIoTの活用を検討していただきたいですね。IoTへの第一歩を踏み出すツールとして、sakura.ioというIoTプラットフォームが使えるIchigoSodaは最良だと思います」と語ります。
さくらインターネットは今後、低消費電力・低コスト・長距離通信を特徴とするIoT向け無線規格、LoRaを採用したIchigoSodaも発売予定。「火守くん」をより安価で付加価値の高い火災通報システムへ──。刀根氏の挑戦はこれからも続いていきます。