- 公的機関・その他
国立情報学研究所(NII)
研究成果物の蓄積と共有を促進する「JAIRO Cloud」がさくらのクラウド上で稼働開始
- クラウドサービス(IaaS)
九州大学では、部局等にメール、WebおよびDNSについてサーバリソースを貸し出す学内ホスティングサービスを運営しています。従来のオンプレミス基盤の課題であった運用負荷や属人化を解消すべく、パブリッククラウド化を図りました。教育機関特有のニーズを満たすべく、インフラとサポートを一元的に提供するさくらインターネットとビットスターのサービスを採用。拡張性にも運用性にもすぐれ、運用負荷も小さな新しいホスティングサービスを開始しました。
九州大学は、1911年に創設された九州帝国大学を母体とし、1949年に旧制九州大学・福岡高等学校・久留米工業専門学校を包括して新制されました。学生約1万8,000人(2019年5月現在)に対し、2,000人超の教員を揃え、手厚い教育・研究環境を整えています。多くの海外留学生を迎えており、国立大学の中でもトップクラスです。大学院にも力を入れており、法学・理学・医学等の18学府が設置されています。
最近までキャンパスは福岡市の各地に点在していましたが、2018年に10年をかけて行われた伊都キャンパスへの統合・移転が完了し、産官学の連携で整備される学術研究都市として稼働を開始しています。単一キャンパスとして日本最大、校地面積も国内第3位を誇ります(2018年時)。
多数の学部・研究院を設置して幅広い教育と研究を提供する中、2018年には新しい学部として「共創学部」を設立しています。グローバル化が急激に進展する現代において、環境・食料・人種・経済といった地球的・人類的な課題へ能動的に取り組むことのできる人材を育成していく多分野の学問とされています。徹底した語学教育や課題解決型のカリキュラム、実践的な協働学習および積極的な留学支援が特徴です。
「積極的なグローバル化の推進において、情報統括本部では世界的なICT拠点となるべく情報基盤・情報システムの整備・運用に取り組んでいます。特に注力しているのが情報セキュリティ対策です。サイバー攻撃等の脅威から機密性。完全性・可用性の観点で情報資産を守るためISMSを導入し、2012年3月に認証を取得しました。また、2014年からはサイバーセキュリティセンターと連携を図りながら、情報資産の適切な保護とセキュリティの向上に努めています」と、九州大学 情報統括本部 情報システム部 情報基盤課の亀岡謙一氏は説明します。
現代における大学・大学院の教育・研究には、IT基盤が欠かせません。高度なシステムを研究に活用する例もあれば、情報発信やコミュニケーションのためにWebやファイルサーバを運営するケースもあります。古くは研究室ごとにサーバを構築して運営していた時代もありましたが、リソースのムダやセキュリティ対策の不備などから、九州大学では2009年から学内ホスティングサービスを運営してきました。
「各研究室は、独立した組織のように運営されていますので、ITニーズも千差万別です。そこで私たちは、学内のITベンダーのように活動し、サービスとしてITを提供する役割を担う必要があります。ホスティングサービスもその一環として、利便性と効率性を両立すべく運営しています」と、情報統括本部 情報システム部 情報基盤課の平野広幸氏は述べています。
サービス開始からまもなく10年、数世代を経たオンプレミスシステムは要となるサーバ管理ソフトウェアのサービス終了を控えて、他のシステムへの更改が求められました。従来のシステムは、基盤がブラックボックス化しており、運用の属人化も進んでいました。そうした運用負荷を解消し、情報基盤課の人的リソースをより高度な戦略・企画等へ集中させたいという思いや、そして昨今のクラウド活用への取り組みもあって、パブリッククラウドをホスティングサービス基盤として利用する方法が検討されました。
「大学機関のインフラということもあって、ネットワーク構成や認証基盤の制限や契約形態など厳しい条件があったのは事実です。SINETを介したL2 VPN接続を受けつけられる環境であることも技術的な要件の1つでした。もちろん、既存のパブリッククラウドサービスをそのまま活用することは困難です。複数のサービスを検討しましたが、すべてのニーズを受け入れてくれるのは、さくらインターネットとビットスターの連合だけでした」(平野氏)
九州大学の新しいホスティングサービス基盤は、さくらのクラウド上に構成され、九州から離れた災害にも強い堅牢なデータセンターで運営されています。管理ツールはWebベースの「cPanel」を選び、ビットスターによって、使いやすくカスタマイズされています。
両社の提案がありサービス基盤をオンプレミスからクラウドへ移行したことにより、リソースの増減が容易になり、ソフトウェアアップデートなどのメンテナンスに時間を取られることもなくなりました。バックアップ環境も整備しやすく、数年ごとのシステム更改の負荷もありません。亀岡氏らは「管理負荷の大幅な低減は大きな効果」と高く評価しています。
利用者である研究室では、従来と同じようにサーバリソースをレンタルできるように構成されています。cPanelは軽快に動作するため、旧システムと比べても使い勝手が向上しているとのことです。
九州大学では、2019年から2020年にかけて急ピッチで移行を進めて、500ドメイン弱をさくらのクラウド上で運用する計画です。学内・学外組織と連携しながら、情報セキュリティ対策を進めていきたいとしています。
「学内ホスティングサービス、業務用のクラウドサービス、セキュリティインシデントなど、さまざまな要素の可視化を強化したいと考えています。運用負荷の軽減によってIT戦略に取り組む時間が確保でき、より強固なセキュリティ施策を検討するためには情報が欠かせません」と亀岡氏は述べ、さくらインターネット/さくらのクラウドの活用で培ったノウハウ/ベストプラクティスが広がり、九州地域の教育機関や企業が大きく成長していくことを期待しています。