国内基盤の信頼性と柔軟なリソース増強が決め手――光ビジネスフォームが「さくらのクラウド」で支える自治体DX
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大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所は、遺伝学の基礎とその応用に関する総合的な研究に取り組む、国内唯一の研究所です。同研究所は、文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の情報センターとして、ショウジョウバエやメダカ、イネ、大腸菌など約30種類のバイオリソースに関するデータベースとWebサイトを公開しています。
この研究基盤は、約20年にわたり研究所内のサーバー室で運用されてきました。その環境を「さくらのクラウド」へ移行するにあたり、環境構築を担ったのが日本ビジネスシステムズ株式会社(以下、JBS)です。本記事では、国立遺伝学研究所の川本祥子氏、JBSの市川諒氏・山﨑優美氏から、移行の経緯と導入後の効果をうかがいました。
※写真左より、さくらインターネット 公共営業部 藤井洸希、日本ビジネスシステムズ株式会社 クラウドテクノロジーサービス事業本部 ハイブリッドクラウド1部 山﨑優美氏、国立遺伝学研究所 NBRP情報センター 生物遺伝資源センター バイオリソース情報部門 川本祥子氏、日本ビジネスシステムズ株式会社 公共・サービス事業本部 営業部 市川諒氏
国立遺伝学研究所が担うNBRP情報センターは、研究に使われる生物遺伝資源(バイオリソース)の情報を一手に集約し、研究者へ提供する役割を担っています。約30種類におよぶ生物種ごとに専門家がつき、データベースやWebサイト、研究者向けの提供フローが整備されてきました。
「20年にわたって情報が蓄積されていった結果、データベースの運用保守が複雑化し、負荷が高いものとなっていました。構成も生物種ごとに異なり、使われている言語も古いものではPerl、一部がPHP、新しいものはJava、といった状況です。データの提供を希望する研究者の個人情報を扱うため、最新のセキュリティー対策も必要です。これらのほぼすべてを、フルスクラッチで開発していました」(川本氏)
継続運用のための負担も小さくありませんでした。24時間365日稼働するサービスを支えるため、運用担当エンジニアの常駐が必要だったのです。システムエラーや災害の際に現場に駆けつけ、最小限のダウンタイムでサービスを再開できる体制を維持する必要があり、この点もクラウド化を検討する背景の一つとなりました。

「脱オンプレミスを目指すことにしたものの、われわれにはクラウド環境の構築経験がありませんでした。オンプレミスで培った構築ノウハウだけでは、クラウド上でどのように構成を組めばよいか判断が難しい状況でした」(川本氏)
そこで、さくらインターネット担当者の藤井はパートナー企業であるJBSを紹介しました。JBSがこれまで培ってきたクラウド構築の知見をもとに構成案の検討を進め、さくらインターネットがサービス仕様や実装面の技術支援を行うことで、国立遺伝学研究所が抱えていた「クラウド上の構成が描けない」という課題の解決を支援しました。
JBSは、1990年の創業以来、ITインフラ構築を基盤に事業を広げ、現在はクラウド技術を軸に企業や公共機関のDXを支援しています。今回、JBSが環境構築を担うことになり、市川氏は公共分野の担当営業として、山﨑氏はクラウド化の実作業を担うエンジニアとして移行プロジェクトに参画しました。
「さくらインターネットからは、密な情報共有と伴走をいただきました。プリセールスの段階からしっかりと支援していただき、ありがたかったです」(市川氏)
技術的な問い合わせへの対応も、プロジェクトの進行を支えました。山﨑氏は、回答のスピードと内容の両面で助けられたと振り返ります。

「困ったときのサポートが手厚く、助かりました。『この設定値はどうすればよいのだろう』というレベルの、本当に細かい疑問でも、問い合わせるとすぐに回答をいただけました。現場のエンジニア目線での回答も多く、大変わかりやすかったです。少々難しい機能について問い合わせた際にも、『対応できません』で終わらなかったことも印象に残っています。その際は、『さくらのクラウドにその機能はありませんが、OSのこういう機能を組み合わせれば実装できます』という、かなり踏み込んだ回答をいただきました」(山﨑氏)
要件定義を経て、約2か月で環境を構築から引き渡しまで完了しました。川本氏がオンプレミス環境の仕様を熟知していたことも、スムーズな進行につながったといいます。
「ヒアリングの場で、OSの設定値レベルまで即答いただきました。非常に進めやすかったですね」(市川氏)

「クラウドの選定にあたっては、他社との比較検討もしました。そのなかで、クラウドでありながらもオンプレミスに近い操作感で使いやすいクラウドサービスが、さくらのクラウドでした。実際に使ってみると想定どおりの使い勝手で、満足しています」(川本氏)
今回のクラウド移行は、一部のオンプレミス環境を残しつつ、段階的にさくらのクラウドへ環境とデータを移していく方法で進められました。柔軟な構成を選択できるインフラ環境が、トラブルの少ない移行につながったと川本氏は振り返ります。
「さくらのクラウドに移行してから、まず運用負荷の軽減を実感しています。オンプレミスで運用していた際は、エンジニアが機器のアラーム対応のために現場に急行する必要がありました。さくらのクラウドでは、サーバー機器の運用保守はさくらインターネットが担うため、その必要がなくなり、データバックアップも自動で取得できます。手間をかけず、安心して運用できています」(川本氏)
川本氏は現在、20年分のシステムを整理するためのモダナイズも進めています。データベースをOracleからPostgreSQLへ移行し、RDB(リレーショナルデータベース)への問い合わせをDjangoでAPI化しています。横断検索にはElasticsearchを導入して高速化しました。アプリケーションやミドルウェアはコンテナ単位で管理し、フロントエンドのUIもJavaScriptで統一しました。これにより、生物種が違っても、研究者が同じ使い勝手でバイオリソースの入手や申請をできるようになりました。ネットワーク分離によるセキュリティーの強化も完了しています。
「これを機にデータ構造を整理し直すことにしました。JBSさんには知見を生かした構成検討と環境構築をお願いし、その後続のデータ移行は自前で実施する形で進めました」(川本氏)

国立遺伝学研究所がさくらのクラウドへ移行したのは、バイオリソースのデータベースやWebアプリケーションの公開部分でした。遺伝子の「生データ」であるゲノム情報は、オンプレミス環境に残しています。
「ゲノム情報はデータ量が巨大なため、すべてをクラウドに移すのは現実的ではないと考えています。そこで現在は、クラウドにメタデータを置き、生データと解析環境はオンプレミスに保管しています。メタデータから、オンプレミスの解析環境へと導線を引いています」(川本氏)
コストパフォーマンスに優れたさくらのクラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド構成にすることで運用性とコストのバランスを図っています。また、オンプレミスGPUを活用し、RAG(検索拡張生成)によるチャットボットの試験運用も始めています。
「今後はデータサイエンス向けサービスの拡充や、セキュリティー対策のさらなる拡充も期待したいですね。研究を止めないための堅牢な基盤を築いていきたいと思っています」(川本氏)
さくらのクラウドを基盤に研究を支えるシステムをモダナイズし、災害にも止まりにくい運用を実現しました。20年分の積み重ねをひとつずつ整理しながら、研究基盤の次の姿が形づくられようとしています。
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