クラウド上の仮想ルータを活用して、 見通し良く確実に統合認証システムを運用開始
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学校法人 桜美林学園
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航空測量・地理空間情報事業を主軸に、自治体の固定資産税評価支援や統合型GIS(地理情報システム)を展開するエアロトヨタ株式会社。同社の「LGWAN(総合行政ネットワーク)」を通じたASPサービスの基盤に、さくらインターネットの「さくらのクラウド」が採用されています。 今回は、自治体アセット事業部 事業部長の織田氏、システム開発統括部 クラウドサービス管理グループ リーダーの永田氏、同部の白石氏の3名から、公共事業向けサービスならではの課題とさくらのクラウドの効果、今後の展望についてうかがいました。
航空測量から地理空間情報サービスまで。自治体の行政業務を「地図情報」で支える

エアロトヨタ株式会社(旧・朝日航洋株式会社)は1955年創業の、空間情報事業と航空事業の老舗です。ヘリコプターによる物資輸送や空中写真の撮影などから事業を始め、現在は1976年から続く固定資産の評価支援事業を主軸とした、地理空間情報サービスを展開しています。
「当社では自治体のお客様に対し、さまざまなクラウドサービスを提供しています。例えば、固定資産税の調査・評価を支援するサービスでは、航空写真を活用して土地や建物の状況を把握し、その情報を基に評価額の算定を支援するとともに、GIS(地理情報システム)で一元管理します。また、庁内の地理空間情報を横断的に活用する『統合型GIS』も提供しています。都市計画や道路台帳、上下水道台帳、防災マップなど、自治体の各部署が地図情報を共有して利用できるアプリケーションです」(織田氏)
これらのサービスは公共団体向けの閉域ネットワーク「LGWAN」を通じたASP(Application Service Provider)として提供されています。自治体の機密情報を扱う性格上、高いセキュリティと安定した運用が求められる領域です。
自治体基盤のクラウド化が急速に進む中で、リソース調達のリードタイムが課題に
しかし民間事業が導入事例を増やすなかで、徐々に自治体事業でもクラウド化が進み始めます。自治体は個人情報をはじめとする機密性の高い情報を扱うため、セキュリティ要件が非常に厳格です。 そのため従来は多くのシステムがオンプレミスで運用され、クラウド移行についても他業種と比べ慎重な傾向がありました。

しかし国のデジタル化政策やクラウド活用を後押しする方針を背景に 、自治体でも徐々にクラウド化が進み始めます。
「前例を重視する自治体さまは、近隣の自治体の先行事例をよく参考にされます。とくに先進的な都市がシステムリプレイスの際にクラウドを採用すると、周囲の市区町村でも同様の判断が広がりやすくなります。実際、2015年ころからその傾向がみられました。システムのリプレイスはおおむね5年周期で発生するため、中期的な需要はある程度見込めていましたが、当時の環境ではサーバーを柔軟に増強することが難しい状況でした」(織田氏)
今後5~10年で行政システムのクラウド化が一斉に進むと予測できる中で、調達の課題が深刻になっていました。
「自治体の情報へのアクセスは、年度の切り替わりや申請の繁忙期といったタイミングで集中します。その際に自治体業務では、年度替わりや各種申請の繁忙期などにアクセスが集中します。そこでサーバーがダウンしてしまっては、サービスの品質を保てません。しかし当時使っていたデータセンターでは、調達にとても時間がかかりました。当時は『サーバーを追加したい』と依頼して、見積書を受領し、発注書を発行して、契約する……という手順が必要でした。問い合わせから納品まで、3ヶ月ほど必要だったのです。必要なときに必要なぶんだけ使うことができず、あらかじめオーバースペックな構成を確保する『過剰調達』が避けられませんでした」(永田氏)
LGWANに対応し、ワンクリックするだけで素早くリソースを確保できる唯一の選択肢だった
エアロトヨタは、これらの課題を解決するため、LGWAN-ASPに対応したクラウド基盤への移行を検討。最終的に、さくらインターネット「さくらのクラウド」が採用されました。選定の決め手は「LGWANへの対応・拡張性・価格の最適性・国内リージョン運用」の4点が揃っていたことだといいます。
「LGWAN-ASPのファシリティサービスとして登録されていた中から、複数のクラウドサービスを比較検討しました。そのなかで、コントロールパネルからワンクリックするだけでサーバーを作れるのは、さくらのクラウドだけ。当時私たちが検討したサービスの多くは、やはり見積書を出して注文書を発行して……という従来型の調達フローが必要でした」(永田氏)
さくらのクラウドのコントロールパネルでは、仮想サーバーのスペック変更や追加をリアルタイムで実行可能。いまどれだけのリソースが必要かをその時点で判断し、必要に応じてスケールアップ・スケールアウトができます。その構造が、需要の変動が大きい自治体向けサービスにマッチしました。

「自治体案件では、システムを基本的に5年程度利用します。そのため提案時には当年度のだけではなく、5年後までを見据えたトータルのコストの試算が求められます。海外のクラウドの場合、為替変動によって月額費用が変動するほか、通信量に応じた従量課金が発生するため、長期的なコスト予測が難しいという課題がありました。一方、さくらのクラウドは国内リージョンで円建てです。しかも通信量に応じた従量課金制ではないため、中長期のコスト見通しが立てやすい。非常に助かりました」(白石氏)
また、行政の調達要件と合致していた点も、選定の決め手として大きかったといいます。
「地理情報には、地方行政での活用の他にもさまざまな価値があります。地政学的な観点からも、詳細な情報が国外に流出するのは望ましくありません。そのため自治体の発注仕様では、『データセンターが国内にあること』を条件とする案件も少なくありません。外資系のサービスは『利用するリージョンが国内であること』を証明する必要があり、海外リージョンのみのサービスでは入札に参加できないケースもありました。さくらのクラウドは国産クラウドで、データセンターも国内で完結しています。そのため、自治体に対して要件を満たしていることをシンプルに説明できます」(織田氏)
1年かけて100システムを無停止移行——夜間・休日を活用した段階的な切り替え
移行を決定してから本番切り替えまでに要した期間は、計画・検証フェーズも含めておよそ1年。当時すでに100ほどのシステムが稼働しており、それらを止めずに移行する必要がありました。
「移行に向けた工程設計には特に苦労しました。自治体業務を停止しないことを前提としたため、夜間・休日帯を活用しつつ、システム単位での慎重な移行を採用しました。移行期間中も新規案件が継続的に発生する環境下で、既存運用と並行した対応が求められる作業となりました」
移行に先立ち、本番環境と同等の構成でステージング環境を構築し、動作確認を実施。データ移行手順の事前検証や、LGWAN-ASP要件を踏まえたリスク分析を丁寧に行いました。また、自治体側にも切り替え前に新環境への接続テストを依頼し、トラブルリスクの最小化を図りました。移行後、ユーザーさまからの反応は「いい意味で少ない」といいます。
「移行中は大きなトラブルはなく、移行後も大きなご指摘はいただいていません。旧環境では、ときどき『レスポンスが悪い』というご指摘をいただいていました。しかし切り替え後は、そのようなネガティブなフィードバックは減少しています。お客さまにとって重要なのは『問題なくサービスが使えるか』です。接続やデータセンターの環境を意識するフィードバックがないということが、順調に動いている証になると思います」(織田氏)
安定稼働と拡張性を両立、次は「ガバメントクラウド」との連携へ
同社が運用する自治体システム数は、現在(2026年3月時点)で移行当初の約2.5倍に増加しています。負荷が上がるなかでも、コスト、安定性、拡張性すべてに効果が出ているといいます。
「コントロールパネルからワンクリックするだけで、すぐにリソースを確保できます。シンプルなUIで柔軟なネットワーク設定ができ、LGWANのプロバイダーにとって、とても使い勝手がよい部分です。現状ではベストな選択肢だと思っています」(永田氏)
同社は今後の事業展望としてガバメントクラウドへの対応も視野に入れているそうです。自治体の行政システムを標準化された安全なクラウド基盤に集約する取り組む中で、エアロトヨタが展開する固定資産評価支援や統合型GISも対応を進めていくとのこと。
「さくらインターネットさんのガバメントクラウド採用に続き、われわれもLGWAN環境で長年一緒に取り組んできた実績をもとにタッグを組んで進めていきたいと考えています」(白石氏)
「われわれのミッションは、品質と信頼を愚直に積み重ねていくことから始まると考えています。地理空間情報のデータはこれからますます大容量化・高度化していきます。その変化に対応していくためのインフラとして、今後もさくらのクラウドには伴走し続けていただくことを期待しています」(織田氏)
AIや3Dデータ、デジタルツインなど、地理空間情報がさまざまなビジネス領域に関連していく中で、半世紀にわたるノウハウを蓄積したエアロトヨタ。事業の成長を支えるクラウド基盤として、さくらのクラウドもお手伝いをしています。
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