クラウド上の仮想ルータを活用して、 見通し良く確実に統合認証システムを運用開始
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学校法人 桜美林学園
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国内のみならずグローバルで展開し、日本を代表するはかりメーカーの株式会社イシダ。1893年の創業以来、主力の計量器に加え、川上から川下まで食のインフラを支えるさまざまな装置の開発・販売をおこなっています。 同社では現在、スーパーマーケットのバックヤードなどで稼働する計量器オンラインシステム「Fresh Action-X」の基盤に「さくらのクラウド」を活用しています。システムエンジニア部の塩山 悠介氏、芳賀 俊秀氏、そして、グループ会社で開発を担う株式会社イシダシステム開発の藤原 都羽氏にインタビューを実施。さくらのクラウドの導入背景や現場で得られた具体的な効果、今後の事業展望まで聞きました。
1893年、民間初の産業用はかりメーカーとして創業した株式会社イシダ。現在は計量器にとどまらず、包装、検査、表示、情報、搬送、衛生などへと事業領域を拡大し、食のサプライチェーン全体を支えるソリューションを世界100か国以上で展開しています。近年では、食品業界に加え、物流・医療・工業分野にも導入が広がっており、同社の技術はさまざまな現場で活用されています。
同社が「さくらのクラウド」を導入しているのは、おもにスーパーマーケットのバックヤードで使用する計量器や包装機と連携するオンラインシステム「Fresh Action-X」です。
「店舗に並んでいる惣菜や精肉には、商品情報が記載されたラベルシールが貼られていると思います。そのラベルには、実際に商品を計量した内容が反映されています。計量器は、マスタ管理システムからオンラインでデータを受信しており、そのマスタ管理システムをさくらのクラウド上に構築しました。当社の機器で使用する商品データをクラウド上で一元管理し、現場の担当者が計量器を操作して必要なデータを呼び出し、店頭で販売する生鮮食品の計量・包装をおこなっています。クラウドで統合的に管理することで、食品表示の誤り防止にもつながっています」(塩山氏)

導入を検討し始めた2018年ごろ、市場はオンプレミスが主流でしたが、顧客側からは「自社でサーバーを設置・管理するのはコストがかかるため、クラウドへ移行したい」というニーズが高まっていました。
「当時は一部のITベンダーにクラウド運用を依頼していましたが、クラウドリフトの加速を見据え、自社グループでの運用にシフトしたいという想いがありました。複数ベンダーを比較するなかで、当社のBtoBサービスに無理なく適合する価格体系である点や、技術サポート面での安心感があり、最も要件に合っていると感じたのが、さくらのクラウドでした」(塩山氏)
導入後のメリットについて塩山氏は、費用面だけでなく、操作性のシンプルさも評価しています。
「外資系クラウドと比べて、コストパフォーマンスの良さはもちろんですが、操作がシンプルで迷わず使える点が気に入っています。当社ではあくまでサービス基盤として利用しているため、必要以上に多機能である必要はなく、最小限で十分だと考えています。さくらのクラウドは設定も簡単で、使い勝手が非常によいですね」(塩山氏)
ただ導入当初、社内にはクラウドに対する知見が十分ではなく、未知の領域に対する心理的なハードルがありました。この課題を解決したのが、さくらインターネット従業員による継続的な勉強会です。
「当時は社内でもさくらインターネットの知名度が低く、クラウドそのものへの理解も乏しい状態でした。そこで定期的に勉強会を開いてもらい、インフラの基礎から具体的な技術までご説明いただきました。現在も半年に1回は開催しており、とくに営業担当はクラウドの利点を正しく理解したことで、お客さまに自信を持って説明し、契約につながるケースも増えています」(塩山氏)
エンジニアの芳賀氏も、勉強会が学習コストの低減に役立っていると話します。

「最近では、高負荷時に自動でスペックを調整できるオートスケール機能※を学び、最新技術を取り入れるきっかけになりました。アップデート情報を直接収集できるため、新しいことに挑戦する際の不安もなくなっています」(芳賀氏)
※サーバーに負荷が発生した際に対象サーバーのスペックアップをおこなう「スケールアップ」と、台数を増やす「スケールアウト」の両方が利用可能。サーバーの負荷が解消されると、自動的にスケールダウンやスケールインがおこなわれる。
スーパーマーケットの店頭では、システムが停止すると、生鮮食品や総菜などの商品の品出しができなくなるため、迅速な対応が不可欠です。「さくらのクラウド」への移行は、保守業務のスピード向上にも大きな効果をもたらしました。
「当社では別部署のシステムサポート課が、各店舗に設置されているシステムの保守業務を担当しています。そして、エラーが発生すると私の部署に対応依頼が回ってくるのですが、検証や再現をおこなうには対象データが必要です。オンプレミス時代は、そのデータを送ってもらうまでに手間と時間がかかっていました。現在はクラウドで管理しているケースが増えたことで、必要なデータをすぐに共有してもらえるようになり、お客さまが利用しているシステムのバージョンも即座に把握できます。その結果、エラー発生から解決までの時間が大幅に短縮できました」(藤原氏)

一方、芳賀氏は、さくらのクラウドを利用するなかで、「日本の利用者にとって自然な環境が整っている点に助けられた」と振り返ります。たとえば、日本語が標準設定になっていることや、タイムゾーンがJSTであることなど、初期状態から日本向けの配慮が行き届いている点が印象的だったと話します。
「普段さくらのクラウドで慣れていたので、外資系クラウドに触れる機会があったときに、キーボード設定やタイムゾーンの違いで戸惑うことがありました。さくらのクラウドは最初から日本向けの設定が整っているので、そうした部分で助けられたことも多かったと気づきましたね。セットアップスクリプトの活用など工夫しだいで柔軟にカスタマイズできる点も魅力です。単にサーバーを構築するだけでなく、もう少しプラスアルファの使い方もできる。導入を検討する企業にとっては、そうした拡張性もポイントになるのではと思いますね」(芳賀氏)
さらに芳賀氏は、コントロールパネルの「マップ機能※」についても高く評価しています。
「サーバーやネットワークの接続状況がグラフィカルに可視化されているため、とてもわかりやすいと感じています。視覚的に一目で構成図がわかるので、一部を抜粋して説明用の資料に貼り付けるなど重宝しています」(芳賀氏)
※サーバーとスイッチ(ハブとルーター)の接続状態を可視化する機能
また、クラウド活用において「各社の使い分けも重要なポイント」だと芳賀氏はいいます。
「今後、外販ITのビジネスを拡大していくためには、クラウドの有効活用は避けては通れません。私たちユーザーも、各社のクラウドプラットフォームの特性を理解し、賢く使い分けられるスマートユーザーになることが求められていると感じます」(芳賀氏)
今後の展望として同社は、さらなる安定稼働を目指し、「AppRun」の活用も検討しています。「AppRun」は、コンテナ化されたアプリケーションをサーバーレスで実行できるサービスで、利用者はサーバーのプロビジョニングやスケーリングといったインフラ運用の負担を軽減できます。
同社では、負荷の変動に応じて柔軟に拡張できる環境を整えることで、より止まらないサービス提供を実現していく考えです。
「当社が提供しているのはBtoBの業務システムのため、サービスを止めずに安定して提供し続けることが非常に重要です。現在はIaaS上でサーバーを立てて運用していますが、新店舗の増加などにともない接続クライアントが増えると、負荷が想定を超えてしまうケースもあります。監視はおこなっているものの、IaaSではスケールアップ時に一度サーバーを停止して立て直す必要があり、停止を伴わずに拡張できる仕組みが課題でした。そうした背景から、負荷に応じて自動的にスケールできるサーバーレスの仕組みには、今後積極的に挑戦していきたいと考えています」(芳賀氏)
イシダでは、システムの利用によって蓄積されるデータの活用も、今後の可能性として視野に入れています。たとえば、AIを用いた新たな付加価値の創出など、保有データを生かした展開を期待されています。
実際、店舗によってはクラウド移行によって蓄積されたデータを販促にも活用し始めています。食品業界では、惣菜をパックするためにラベルを発行する工程を「生産」と呼びますが。その生産数とPOSデータを組み合わせることで、計画的に惣菜パック数を決定するなど、販売戦略に役立てているケースもあります。
「大手のお客さまでは、ラベル印字だけで1日65万レコード規模のデータが発生しています。いつにどの商品が印字され、売り場に並んだのかといった情報が蓄積されていますので、忙しい時間帯の可視化や販促との連動など、活用の余地は大きいと感じています。さらに、クラウド基盤によってデータを集約できるようになったいま、AIを活用した新しい提案もできるのではないかと考えています」(芳賀氏)
一方で、AI活用への温度感は企業規模によって差があるのも事実です。それでも同社では、データサイエンスに取り組む人材の育成や、さくらインターネット主催の勉強会への参加などを通じて、モノづくり企業としての強みを生かしながら、データ活用企業へと進化するための土台づくりを進めています。最後に塩山氏は、さくらのクラウドの最大の特長として「国産であること」を挙げます。外資系クラウドが主流となるなかでも、日本発のクラウドサービスに目を向けてほしいと期待を示しました。
さくらのクラウドの一番の特徴は、やはり国産であることだと思っています。マルチクラウドが当たり前となった現在において、外国資本のパブリッククラウドと差別化された「さくらのクラウド」を利用するユースケースは存在すると考えています。特に、国産ならではの“使いやすさ”は当社の事業にも適していると感じています。
さくらインターネットには、規模や機能数で競うのではなく、他社と明確に差別化された独自価値を持ち続けていただくことを期待したいですね。クラウドユーザーのみなさまには是非、国産クラウドにも目を向けていただきたいですし、当社は今後も、さくらのクラウドを活用して高品質なサービスを提供していきたいと考えています」(塩山氏)
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