「さくらのクラウド」へ移行しインフラコストを最大1/6に削減。absが推進する葬儀DX基盤を構築
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日本最大級のIT技術コミュニティ「JANOG(JApan Network Operators' Group)※」が2026年2月に大阪で開催した「JANOG57ミーティング」では、クラウドと閉域網を組み合わせることで、現地にサーバーを設置せずに事前構築・検証を行えるネットワーク運用の仕組みを実現しました。 その運営の要となったのが、ネットワークの監視・運用・保守を担うNOC(ネットワーク・オペレーション・センター)チーム。今回、グループ会社であるBBSakura Networks株式会社と共同で、会場ネットワーク構築に、「さくらのクラウド」と閉域網接続サービス「OCX by BBIX」を採用しました。 本記事では、NOCチームの一員としてインフラ構築を主導した、さくらインターネット株式会社 SRE本部の米田 悠人に、同構成の検討から導入、得られた効果について聞きました。 ※JANOGとは、企業や組織の垣根を超え、国内のネットワークエンジニアが技術・運用に関する知見を共有するコミュニティイベントです。全国から多くの会員が一堂に集い、年に2回大規模なミーティングを開催しています。
――まず、JANOG57におけるNOCチームの役割について教えてください。
米田:NOCは、さくらインターネットの社員を中心に、他社のエンジニアや学生メンバーが一体となって構成される技術者チームです。JANOG57では、グループ会社のBBSakura Networks株式会社と連携しながら、会場ネットワークの設計・構築から、会期中の運用までを担いました。
今回の取り組みでは、「さくらのクラウド」と会場間を閉域網接続する「OCX by BBIX」を採用することで、現地にネットワークが存在しない段階から、設定・検証を進められる環境を実現しました。
具体的には、OCXの仮想インターフェース「Cloud Connection」で「さくらのクラウド」上のバックボーンと接続。検証段階ではさくらインターネット本社の検証ラックに「OCX光 10G」を収容しました。これにより、会場設営が始まる数か月前から設定や検証が進められる体制を構築しています。
ポイントは、OCX光を用いたことで、クラウド上の構成だけでなく、ラストワンマイルを含めた実ネットワーク構成を事前に再現できた点です。これにより、本番環境との差異を最小化した検証が可能となりました。
本番環境では、株式会社オプテージのダークファイバーに加え、OCX光 10Gと、OCX光 1Gを組み合わせて構成し、検証で固めた前提をベースに切り替え・運用を実施しました。
――今回の取り組みでは、「OCX by BBIX」を導入することで、事前の設定・検証ができる環境を構築しました。逆に言えば、それまでは事前検証ができない環境だったということでしょうか。
米田:そうなんです。従来のJANOGネットワーク構築では、バックボーン構築を本番直前のホットステージ(本番と同じ機材構成でシステムを動かす事前構築・検証のこと)の約5日間に集中させざるをえないという構造的な課題がありました。その結果、障害や通信の揺らぎを想定した「カオステスト」が十分に実施できず、本番でトラブルが発生するリスクをつねに抱えていました。
実際に、数日前になって急いで設定を組まなければならないなど、属人的かつ直前作業に依存した進め方が課題になっていたんです。そのため、従来は数日前に設定作業が集中するケースもあり、本番まで不確実性が残りやすい状況でした。さらに、今回は会場が3か所に分かれるなど、物理的なネットワーク構成が非常に複雑だったことも、構築の難易度を押し上げていました。
――今回の構成に至った決め手はなんだったのでしょうか。
米田:現地ネットワークの有無、準備期間、検証性、切り替えの確実性などの条件を踏まえ検討しました。その結果、それらを満たす構成として「OCX by BBIX」による構成が最適な構成だと判断しました。とくに、事前準備を最大化できる点が決め手になりましたね。

――実際の効果について教えてください。
米田:事前に検証環境を構築できたことで、前もって未検証や未決定事項を削減することができました。本番直前の作業は「最後の確認と切り替え(スイッチオーバー)」だけに集約することができたので余裕をもって本番を迎えることができましたね。
また、事前にIPアドレス設計(セグメント)を確定させられたことも効果的だったと思います。利用するセグメントを数か月前から固定できたため、オンプレミスで動かすスイッチやルーターなどの機器設定もすべて前倒しで準備できました。これにより、検証と本番のギャップが極限まで縮まり、運用の見通しが非常に立てやすくなりました。
従来は直前に実施していた構築・設定作業の大半を、数か月前に前倒しで完了できる体制へと移行できた点は、大きな手ごたえを感じましたね。
――コスト面での満足度はいかがでしょうか。
米田:今回の価値は、単なる「回線費用」以上のところにあったと感じています。直前の突貫作業が減り、検証不足によるトラブル対応や手戻りのリスクを大幅に低減できたことは、コストパフォーマンスの観点からも十分に価値があったので、非常に満足しています。
――今回の経験を踏まえ、これから導入を検討されている方へアドバイスはありますか。
米田:直前に作業が寄りがちなプロジェクトほど、まずは「事前に決めるべきパラメーター(アドレス設計など)」を早期に固定し、クラウド+OCXの環境で先に検証を回すことをおすすめします。そうすることで、本番ではスイッチオーバーだけに集中できるようになります。
――最後に、さくらインターネットとして今後のサービスの展望について聞かせてください。
米田:今回のように、短期間で確実な構築・切り替えが求められるネットワーク案件は、今後ますます増えていくと見ています。そうした場面で、クラウドと接続サービスを組み合わせ、事前検証を前倒しできることは大きな価値があります。
そのため、「OCX by BBIX」による構成は、今回のようなイベント用途に限らず、企業の拠点間接続やハイブリッドクラウド構築においても、強力な選択肢になります。
今後は今回の成功体験をもとに、検証から本番切り替えまでのプロセスをテンプレート化・標準化し、運用支援まで含めた提供価値をさらに高めていきたいと考えています。
※掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
