全ゲノム解析の時間を大幅な削減──テンクーが「高火力 VRT」で実現したゲノム情報の高速解析と開発体制の強化とは
- WEBサービス&アプリ提供者
株式会社テンクー
- GPUサーバーサービス



株式会社インフォメーション・ディベロプメント(以下、ID)とSBI R3 Japan株式会社(以下、SBI R3J)は、厳格な要件が求められる領域での活用を見据え、次世代の逐次学習型AIエージェントの開発を進めています。両社は、その学習基盤としてさくらインターネットのGPUクラウドサービス「高火力 VRT」を採用しました。AIで自社のデータをビジネス活用するには、データを安全に、ガバナンスを効かせた状態で扱える環境が求められます。2社は経済安全保障の観点から、国産クラウドを選択しました。開発の中核を担うID デジタル・デザイン・ラボ フェロー 牧野剛明氏、技術検証を支援するSBI R3J エンジニアリング部 マネジャー 新井叡樹氏に選定の経緯と導入効果について聞きました。

IDが開発した「SAPHI」(サフィー)は、金融・行政など、厳格な要件を想定した次世代セキュアAIエージェントです。生成AIが抱える、知識を即座に反映する「逐次学習」の困難さや、監査・透明性の課題に対し、新しい逐次学習型のコアをフルスクラッチで構築。そのうえで、大規模言語モデル(LLM)を思考中枢ではなく「言語化」のみに用いる独自のハイブリッド構成で解決を図る点を特長としています。
「AI学習におけるリスクを低減させるため、国内にあるデータを使い、守るべきデータが国外に流出しないような仕組みにしました」(牧野氏)
金融・行政などの分野では、インフラからアプリまで「セキュアであること」が強く求められます。そこで牧野氏は、SBI R3Jのブロックチェーン基盤「Corda」(コルダ)を活用。改ざん耐性と透明性を確保できる基盤にAIの学習データを保存するとともに、スマートコントラクトを介した厳格なデータ交換インターフェース管理により、信頼性の向上と意図しないデータ流出を防ぐ仕組みを構築しました。
SAPHIは、金融や行政が求める極めて高いセキュリティレベルと、逐次学習型AIモデルによる高度な業務支援を両立するものです。経済産業省(METI)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する懸賞金活用型プログラム「GENIAC-PRIZE」にも応募。国産AIと国産インフラのシナジーを実証する取り組みとして、注目されています。
AI開発には、高性能で大規模な計算リソースが不可欠です。牧野氏が当初使用していたローカル環境では、現実的な開発は困難だったといいます。
「1つの回答を生成するだけで数秒から数十秒、全体テストには数週間かかることもありました」(牧野氏)
自社での高性能GPU環境の整備も検討したものの、当時から必要な機材の調達が難しく、納期やコスト、性能面など不透明な状況でした。
「自社調達も考えました。しかし、検討していた頃から世界的に半導体の供給が不足しており、必要なGPUの入手が難しく、導入時期や費用など見込みが立ちませんでした」(牧野氏)
こうした背景から、開発スケジュールに間に合わせるため、「短期間で安定した高性能環境を利用できるクラウドGPU」の採用を検討することとなりました。


クラウド基盤の選定にあたっては、海外大手サービスを含む複数の候補が検討されました。そのなかで新井氏は、データの透明性とガバナンスを重視する観点から、国産の高火力 VRTを有力候補としました。
「重要なデータを海外で保管するのは、安全保障上のリスクになり得ます。自社のデータを国外事業者の管理下に置く場合、どの国の法制度に基づいて扱われるのかを慎重に見極める必要がある。国内事業者であれば、お客さまの大切なデータをより適切に管理できると判断しました」(新井氏)
また、GENIACにおける「国産ツール活用」の方針と、同プロジェクトからの要請やR&D開発現場のニーズを踏まえ、複雑な仕組みの構築よりもシンプルなパターンを迅速に提供・変更できる柔軟性を重視。これらの点を総合的に判断し、さくらインターネットの環境を採用しました。
実際に高火力 VRTを利用した印象について、新井氏は次のように語ります。
「全体の構成は非常にシンプルで、ダッシュボードの情報量に圧倒されてしまうこともありません。マニュアルなしでも直感的に操作できる点が、とてもありがたいですね」(新井氏)
開発を担当したIDのエンジニアからも、スムーズにサーバー構築できた、画面遷移が直感的でわかりやすかった、といった声が上がっています。また、牧野氏は処理性能の高さについても高く評価しました。
「ワークテストにかかる時間は、これまでの約4分の1以下に短縮されました。必要な機能がしっかり揃っていて使いやすいと感じています」(牧野氏)
また、ビジネス面でも、国産クラウドを選択した大きなメリットがありました。
「エンタープライズにとって請求書払いに対応している点は非常に重要です。海外クラウドの多くはクレジットカード決済が基本なので、経理の業務が煩雑になってしまいます。その点、さくらインターネットは支払い方法も柔軟に対応してくださり、とても助かっています」(新井氏)
現在、チームはサービスの実装に向けて開発を進めており、そのなかで、高火力 VRTは逐次学習型AIエージェントの学習と検証シーンで活用されています。
「社会実装にあたり、データの共有範囲制限やプライバシー管理が重要になるため、引き続き高火力 VRTやさくらインターネットのサービスを活用したいと考えています」(新井氏)
「国産クラウドでここまで大規模なのはさくらインターネットだけ。唯一無二の存在として、今後も期待しています」(牧野氏)
生成AIの持つ課題解決をめざした最先端の研究成果と国産インフラの組み合わせにより、データ主権とガバナンスを確保しながら、先進的なAI開発を進めるIDとSBI R3J。その取り組みは、日本のAI産業の未来を示す1つのモデルケースとなるでしょう。
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