AIロボットによる完全自動イチゴ栽培を実現するHarvestX──「高火力 VRT」でAIモデルの学習時間を33%短縮。イチゴの花の検出率99%と国産クラウドの安全性を両立
- メーカー
HarvestX株式会社
- GPUサーバーサービス


2025年8月、日本発の衛星データプラットフォーム“Tellus”の開発・運用をおこなう株式会社Tellusが、 衛星データを活用したAIモデルの開発・検証に必要な環境を提供する新 サービス「Tellus AI Playground」の提供を開始しました。 AI技術が急速に進むなかで、企業の事業開発・研究開発部門などで、AIモデルの開発ニーズも高まっています。しかし、AIモデルを開発・検証するには、教師データの確保、基盤モデルの選定、高性能なGPU環境の構築など、さまざまな初期コストがかかります。このAIモデル開発のハードルを下げるサービスが「Tellus AI Playground」であり、 高性能のGPU環境として さくらインターネットの VM型GPUクラウドサービス「高火力 VRT」 を利用するサービスとなっています。 今回は株式会社Tellus 技術開発部 部長 養王田 一尚氏から、Tellus AI Playgroundにおける高火力 VRTの活用についてお話を聞きました。

十数年前、宇宙工学といえばハードウェア開発が中心でした。しかし衛星の小型化と大量打ち上げが進み、いまや宇宙産業は製造業だけではなく、情報産業を重要な産業となっています。研究開発の領域だった衛星データは、AIの登場で誰もが活用できる可能性を持ち始めました。
Tellusは、まさに「宇宙産業を日本の産業にしていくには宇宙情報産業を発展する必要がある」という考えにもとづいた、日本発の衛星データプラットフォームとして、衛星データを利用した新たなビジネス創出をお手伝いしています。
今回当社がリリースした「Tellus AI Playground」は、とくに「衛星データを使ったAIモデル開発」に興味がある方に向けたものです。
もともと衛星データの多くは、専門家の研究開発のために作られていました。そのため、必要な研究テーマに合わせてセンサの性能や画像の解像度、データの形式もまちまちで、そのままでは使えません。これらをビジネスに活かすには、「データを使う側」をアシストする仕組みも必要です。そこで、昨今急成長するAI技術を活用すれば、人が頑張らなくても、誰でも宇宙データを扱えるようになるのではないかと考えました。
一方で、宇宙データには、国際的な協調領域と、国内の公共領域、産業として独占したい領域などが混在しています。これらを切り分け、きちんとガバナンスを効かせた状態で、協調領域と競争領域のバランスをとりながら、安全に扱える環境が必要です。
Tellus AI Playgroundは、雑多で膨大な衛星データをガバナンスを効かせつつセキュアに提供し、機械学習に適した環境を整備して、研究者や企業の事業創出に伴走する“安心して使える場”として開発・公開しました。

基盤モデルの学習には、大量の計算処理を高速におこなうGPUが不可欠です。そこで、さくらインターネットの「高火力 VRT」を採用しました。
これまで述べてきた通り、Tellus AI Playgroundは「ユーザーがAIモデル開発を試行錯誤するための場所」です。Tellus側で、面倒な環境構築を肩代わりし、学習をすぐに始められる状態にしてからユーザーにお渡ししています。そのため、自由度が高い環境をタイムリーに確保できる高火力 VRTがベストでした。
また、日本の産業を守り、育てるには、国内のインフラを使って、為替リスクや地政学的なリスクに備える必要があると考えています。クラウドGPUサービスは、他社も強化を進める領域で、今後は国外のメガベンダーも強力なAIモデルやサービスをリリースしてくると思われます。しかし、とくに金融系や公共事業などの分野では、データを国外に送ることが難しい場合があります。そのようなニーズに応えるには、国産クラウドを利用したサービスが有効になるでしょう。
われわれTellusは保有するデータセットやソリューション、これまでプラットフォームを運用してきた経験を活かして、お客様に快適なAI学習環境を提供できるよう取り組んでいますが、そこに「安心」「安全」を付加できているのは高火力 VRTのおかげだと思います。
データセットや基盤モデルのラインナップは、今後もっと増やしていきたいと考えています。とくにデータセットの拡充は急務で、現在提供できるデータセットは光学衛星データで作った1024x1024px、130万パッチになりますが、SAR衛星などバリエーションを増やして幅広いニーズに応えていけるようにしていく予定です。
高火力 VRTに対しても、 NVIDIAの「H200」「B200」など、より強力なGPUの提供を期待しています。私自身もこの環境を使って、また新しいテーマを見つけたいですね。『このサービスを使って、こんなおもしろいことができた!』と、みなさんにアピールできるような事例を、自ら作っていきたいと思っています。
※掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
