さくらのクラウドを用いた動画配信システムの構築
動画配信のシステムを、さくらのクラウドを用いて構築する際のポイントを解説します。
- 要求
- 大量の動画コンテンツの収容と配信
- 広帯域を長時間占有する映像コンテンツの配信処理
- 同時アクセス増加への対応
- 解決策
- 構成のサーバーまたはストレージ+CDNの利用
- CDN導入によるネットワーク負荷の軽減
- CDN導入による安定配信/動画の配信元(ストレージやサーバー)の負荷軽減
大量の動画コンテンツの収容と配信
動画配信の方式には、あらかじめ用意したファイルを再生するオンデマンド配信と、リアルタイムに映像を配信するライブ配信の2種類があります。
オンデマンド配信では、動画ファイルをストレージサービスに保存し、CDNを通じて視聴者に配信する構成が一般的です。
一方で、ライブ配信では、動画配信のマネージドサービスを利用するか、サーバー上に配信アプリケーションを構築して、映像をリアルタイムに形式変換します。この場合も、CDNを通じて配信する構成が一般的です。
いずれの方式でも、近年ではストリーミング形式での配信が主流となっており、CDNから配信することで、より効率的かつ安定した視聴体験を提供することができます。
また、ストリーミング配信だけでなく、MP4などを直接配信するダウンロード配信での構成も可能です。ダウンロード配信の中でも、再生しながらデータを受信するプログレッシブダウンロード形式で配信する場合、Rangeリクエスト対応のCDNを活用できます。さくらインターネットが提供するCDNサービス「ウェブアクセラレータ」はRangeリクエストに対応しており、1ファイルあたり約2GiBまでであればキャッシュ配信が可能です。
このように「収容」と「配信」を役割ごとに分けて設計することで、大量の動画コンテンツの収容と配信に対応できます。

広帯域を長時間占有する映像コンテンツの配信処理
動画配信における問題のひとつとして、ネットワーク帯域を長時間にわたって占有することがあります。
画質が高くなる・動きの多い映像であるほど、視聴者1人あたりの配信に必要な通信量(ビットレート)も増え、たとえばフルHD画質であれば、1人あたり4~18Mbps程度の帯域が必要になります。さらに、同時に多数のユーザーが視聴する場合、必要となる帯域は一気に跳ね上がります。
例として、1人あたりの視聴ビットレートが 5Mbps、同時視聴数が1,000人という場合、必要となる帯域は 5Gbps となります。これを、動画の保存先であるストレージサービスやサーバー等で契約している回線帯域の拡張でまかなおうとすると、コスト面で大きな負担になります。このようなネットワーク帯域への課題に対して効果的なのがCDNの導入です。
CDNを利用し、動画データをCDNからキャッシュ配信することで、動画の保存先であるストレージサービスやサーバー等の帯域消費を大幅に削減できます。特に、近年主流となっているストリーミング形式での配信(HLSやMPEG-DASHなど)では、数秒ごとのセグメントファイルをキャッシュ配信することで、効率的に安定配信できます。
このように、ネットワーク帯域の負荷を軽減する方法として、CDNの導入は効果的です。
必要帯域の試算イメージ
| 解像度 | ビットレート | 同時視聴数 | 必要帯域 |
|---|---|---|---|
| SD(720 × 480 ピクセル) | 0.5 ~ 2 Mbps | 1,000 人 | 0.5 ~ 2 Gbps |
| 2,000 人 | 1 ~ 4 Gbps | ||
| HD(1280 × 720 ピクセル ) | 2 ~ 9 Mbps | 1,000 人 | 2 ~ 9 Gbps |
| 2,000 人 | 4 ~ 18 Gbps | ||
| フルHD(1920 × 1080 ピクセル) | 4 ~ 18 Mbps | 1,000 人 | 4 ~ 18 Gbps |
| 2,000 人 | 8 ~ 32 Gbps | ||
| 4K(4096 × 2160 ピクセル) | 25 ~ 70 Mbps | 1,000 人 | 25 ~ 140 Gbps |
| 2,000 人 | 50 ~ 280 Gbps |
※ ビットレート × 同時視聴数 = 必要帯域
同時アクセス数増加への対応
動画コンテンツの中には、時間帯や話題性によって、多数のユーザーから同時アクセスが集中するケースがあります。こうした状況では、リクエストが短時間に集中することで、動画の保存先であるストレージサービスやサーバー等に過度な負荷がかかり、再生遅延や接続エラーの原因となる可能性があります。このような課題に対しても有効なのがCDNの導入です。
CDNを利用し、動画データをCDNからキャッシュ配信することで、アクセスが集中しても、動画の保存先であるストレージサービスやサーバー等へのリクエスト数を最小限に抑えることが可能になります。
このように、CDNを導入することで、アクセス集中にも安定して対応できる構成を実現することができます。

オンデマンド配信 構成例(ストレージサービス+CDN)

あらかじめ用意した動画ファイルを、ストレージサービスに保管し、CDN経由で視聴者に配信する構成です。
| 製品リンク | 説明 |
|---|---|
| ウェブアクセラレータ | CDNサービス |
| オブジェクトストレージ | ストレージサービス |
ライブ配信 構成例1(配信サーバー+CDN)

サーバー上に配信アプリケーションを構築して、映像をリアルタイムに形式変換し、CDN経由で視聴者に配信する構成です。
| 製品リンク | 説明 |
|---|---|
| ウェブアクセラレータ | CDNサービス |
| サーバー | 仮想サーバー |
| ディスク | 仮想サーバーに接続するストレージサービス |
ライブ配信 構成例2(GSLB+配信サーバー+CDN)

GSLB(広域負荷分散)を活用し、配信サーバーを冗長化する構成です。
| 製品リンク | 説明 |
|---|---|
| ウェブアクセラレータ | CDNサービス |
| GSLB(広域負荷分散) | グローバルサーバーロードバランシング |
| サーバー | 仮想サーバー |
| ディスク | 仮想サーバーに接続するストレージサービス |
ライブ配信 構成例3(プロキシ型LB+配信サーバー+CDN)

プロキシ型ロードバランサを用い、リクエストのパスに応じで複数の配信サーバに振り分ける構成です。
| 製品リンク | 説明 |
| ウェブアクセラレータ | CDNサービス |
| エンハンスドロードバランサ | プロキシ型ロードバランサ |
| サーバー | 仮想サーバー |
| ディスク | 仮想サーバーに接続するストレージサービス |
ライブ配信 構成例4(動画配信のマネージドサービス+CDN)

他社が提供する動画配信のマネージドサービスで配信映像を形式変換し、CDN経由で視聴者に配信する構成です。
| 製品リンク | 説明 |
|---|---|
| ウェブアクセラレータ | CDNサービス |
ご相談されたい方に向けて
上記の構成例について気になる点、ご興味がありましたら下記のお問い合わせよりお気軽にお申し付けください。
| お問い合わせフォーム | ウェブアクセラレータに関する導入相談のお問い合わせフォームです。 |
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