
Lancersは、プログラマーやデザイナー、ライターなど個人(同サービスでは「ランサー」と呼ぶ)と、仕事の発注元(クライアント)との仕事をマッチングするサービスだ。創業者で代表取締役社長の秋好陽介氏は、サービスを構想したきっかけを次のように話す。
「新卒で就職した企業で働いていたころ、外部へ仕事を発注するときにミスマッチを感じた。稟議を出しても与信などの問題があり、いくら良質な発注先でも企業から個人へは発注がしにくい。これらの課題を担保できるサービスが欲しいと思ったが、探してもなかった。ということは、これを事業にすれば『すごいことが起こる』と考えて起業した」
こうして誕生したサービスLancersは、クラウドソーシングを成立させるためのさまざまな工夫を取り入れている。
1点目は成功報酬制度と評価制度を導入したことだ。決済の仮押さえ方式を採用し、報酬をクライアントからいったん預かり、成果物が納品されてクライアントがOKを出した段階でランサーに支払われる。これによりクライアント側、ランサー側の双方のリスクをなくすことができる。また、相互評価の制度があり、クライアントとランサーが評価を蓄積していくことで、双方の信頼を高めていく。さらに評価システムの「ユーザーランク」では、70以上に細分化したカテゴリー別に5階層(トップ、エキスパート、シニア、ランサー、ビギナー)に分けてランサーをランク付けする。特に上位の2階層は電話でヒアリングして認定する徹底ぶりだ。
2点目の工夫は24時間監視だ。不正なユーザーやトラブルへの対応も迅速に行う。ステルスマーケティングやアダルト関連など、違反事項のチェックを厳しく行っている。また、東京大学との共同研究で監視の自動化を試みている。不正な仕事依頼を96%の精度で自動検出した実績を持つという。
3点目はスキルテストだ。世界中で使われているオンライン試験システム「ExpertRating」を使い、PHP、Rubyなどのプログラミング言語や、Illustrator、Flashなどデザインツールのスキルを客観的な基準で認定している。これにより、例えば発注先にしたいランサーが「世界でトップ何パーセントに入るスキルを持っているか」を確認できる。
4点目は本人確認とNDA(秘密保持契約)の徹底だ。ランサーは匿名で仕事をするが、免許証やパスポートなどの書類で本人確認を行っている。NDAもオンラインで締結できる仕組みを整えた。
以上のような工夫と努力により、ランサーズでは対面ではなく、ネット上だけで発注、納品が完成する仕組みを作り、機能させている。2013年6月時点で、デザイナー3万人、エンジニア2万人、ライター2万人が「ランサー」として登録されている。そのうち上位100人は「Lancersだけで暮らせるレベル」の収入を得ているという。