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秋田酒類製造株式会社/秋田県産業技術センター
日本酒のもろみ発酵の温度管理にIoTを活用。業務効率化と担い手不足解消を目指す
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北九州市を地盤にユニークなものづくり事業を展開するYK STORES株式会社と、若きエンジニアの卵を育成する北九州工業高等専門学校、そして高度な画像センシング技術を持つオムロン株式会社。そこにさくらインターネットのsakura.ioが加わることで、将来の大きなビジネス化にも繋がりうるIoTデバイスが生まれました。
宇宙で食事した気分になれるという「宇宙醤油」や、アイスクリーム専用のぬかみそだき「ちょびぬか」など、耳を疑ってしまうような突飛なアイデアを、コラボレーションという手法で数多く製品化に導いてきたYK STORES株式会社。今回紹介するIoT表情センシングデバイス
「lattice-egg」も、そんな夢のコラボアイテムです。開発のきっかけとなったのは、同社代表取締役・吉田一直氏の「表情センサーで表情を検知し、笑顔でないと怒られてしまうブラック企業向けグッズを作ってみたい」というジョークから。
これを実現するために集結したのが、設計担当の北九州工業高等専門学校(合同会社Next Technology)と高性能な画像センシング技術を持つオムロン株式会社の2社+1校。特に北九州工業高等専門学校は、昨年3月に「ものづくり人材の育成」を目的とした連携協定(北九州工業高等専門学校と北九州市で締結)を活用して、産学官連携というかたちで協力関係を深めているところでした。
「試行錯誤の末、行き着いたのが、センサーでユーザーの感情を読み取り、ストレスを検知するとリラックス効果のあるアロマを噴出するという装置です」(吉田氏)
そしてその実証実験などを行っていく中で、このアイデアが大きく発展。アロマデュフューザーに搭載されていた「表情データを自動で蓄積する機能」をIoT デバイスとしてピックアップし、集めたデータをビッグデータとして活用することで、新たな可能性が生まれるのではないかと考え始めたのです。
現在日本では、従業員数50名以上の企業全てにストレスチェックを義務付けて います。しかし、その実態は簡単なペー パーテストを受けて終了というお粗末な ものであることがほとんど。しかしこれ を表情からの解析に置き換えることで、 より正確なストレス診断ができるように なります。さらにデータを蓄積していけば、あたかも株価予想のように、現在の表情 から、その後の感情の推移まで読み取れ るようになるかもしません」(吉田氏)
とは言え、これを実現するためには膨
大な量の表情データが必要。つまり、大量生産可能で、かつ低価格なデバイスの開発が必須となります。それを実現するために求められる条件は、可能な限りシンプルなもの。さまざまな選択肢を検討した結果、行き着いたのが、当時β版の提供が始まっていたsakura.io でした。
「流行りのマイコンボードを使うことも考えましたが、開発やその後の運用を考えると、何が起こるか分からず怖かった。その点、sakura.ioはハードウェアからデータを送受信、蓄積するプラットフォームまで、必要な機能が1つにまとまったワンストップ製品ですから、問題の原因が究明しやすい。何より低価格なこともうれしかったですね」(吉田氏)
さっそく吉田氏はsakura.ioを取り寄せ、北九州工業高等専門学校 機械創造システムコース 准教授の滝本隆氏に製品開発を依頼します。さくらインターネット・田中 社長が高専(舞鶴高専)出身という繋が りから、sakura.ioにはかねてより興味津々だったという滝本さんはこれを快諾。sakura.ioを触るのは初めてでしたが、Next Technology には“やってみたいをカタチにする”という理念があり、「持ち 込まれた時から、やる気満々でした(笑)」
と当時をふり返ります。
「他のこうしたモジュールでは、ネットワー クへの接続やDBの生成などをゼロから 自分でやらねばならないのが普通。しかし、
sakura.ioは必要な機能が1つにまとまったワンストップサービスです。そのため、セキュリテイの確保、ネットワークへの接続など、面倒な作業、専門外の作業をオフロードし、得意とする分野に集中して開発できました。sakura.ioはIoTビジネスの可能性を飛躍的に広げるサービスだと思います。
sakura.ioはそのあたりも含めてパッケージ化されています。面倒な作業、専門外の作業をオフロードできるので、自分の 得意とする分野に集中して開発可能。結果、開発には、エンジニア2名でたった1日し かかかりませんでした」(滝本氏)
また、オムロンの画像センシング技術もsakura.ioと相性抜群。同社の提供する『ヒューマンビジョンコンポ(HVC-P2)』は、人の状態を認識する画像センシング 技術「OKAOR Vision」の10種類のアルゴリズムとカメラモジュールをコンパクト に一体化した強力な装置でした。
「ヒューマンビジョンコンポの素晴らしい ところは、表情の情報を画像ではなく、単純な数値として出力できること。これ がもし個々の顔写真だったりしたら、個 人情報の取り扱いがとても厄介なことに なるところでした。sakura.io の通信速度的にも軽量なデータであることはありが たかったですね。僕らはさくらのサーバー に自動的に蓄積されていく結果の情報だ けを解析していればいい。しかもsakura. ioは閉域網を使うからセキュリティも万全。もう、言うことがありません」(吉田氏)
そして、2017年4月、小型IoT 表情センシングデバイス「lattice-egg(格子状の卵という意味)」が 完成。sakura.io、ヒューマンビジョンコンポのおかげで極めて小型化できたこと、Wi-Fi などの設定不要でどこでもサーバーに接続できる ことなどから、多くの場所にサッと置いて、表情データを収集できるようになりました。
「今後の展望としては、デジタルサイネージなどとの連携も検討中です。その広告が流れた時に、周囲にいた人にどのような感情の推移があったかなどの効果測定ができるのではないかと考えています。お客さんの反応(表情)を見て表示する情報の内容を変えるなんてこともできそうですよね。ほか、原点回帰として当初企画していたアロマディフューザーについても改めて挑戦したいと思っています。ユーザーの状況に合わせてぴったりな香りを調合してくれたりしたら面白そうじゃありませんか?」(吉田氏)
「あっと言う間に完成したという連絡が来て驚きました。そして何より小さいことに感動しましたね」(吉田氏)
また、ジョークグッズ時代から協力を要請していたオムロンの画像センシング技術もsakura.ioと相性抜群。同社の提供する『ヒューマンビジョンコンポ(HVC-P2)』は、人の状態を認識する画像センシング技術「OKAO® Vision」の10種類のアルゴリズムとカメラモジュールをコンパクトに一体化したもの。動作速度も高速で、取得した画像から瞬時に表情のデータを読み取り、表情の度合いを点数化してくれるという強力な装置でした。