導入事例

DNA言語モデルで加速するバイオDX。プラチナバイオの研究開発を支えるGPU基盤

プラチナバイオ株式会社 様

導入サービス

プラチナバイオ株式会社は、2019年に設立された広島大学発のバイオテクノロジー企業です。「バイオテクノロジーで未来を拓く」をビジョンに掲げ、幅広い分野で研究成果の社会実装に取り組んでいます。 同社が注力する「バイオDX」事業の計算資源として、さくらインターネットの「高火力 VRT」が採用されています。今回は、研究開発の現場を担う、代表取締役CEO 奥原 啓輔 氏、研究開発部 バイオDXチーム チームリーダー 中前 和恭 氏、研究開発部 バイオDXチーム バイオインフォマティシャン 大貫 永輝 氏に、導入の経緯と効果についてうかがいました。

課題
GPUを要する解析が増え、社内環境に限界
高性能なGPUは必要だが、大規模並列処理ではなく1基単位で使いたい
ゲノム情報はデータ量が大きく、データ転送にかかるコストが課題
効果
VRAM不足による途中停止の不安が解消し、深層学習モデルのファインチューニングは数日から約1日へ短縮
H100(VRAM 80GB)を1基単位で占有、用途に対して過不足の少ない環境を確保
データ転送の従量課金がなく、約6TBの一時領域で大容量データを扱える

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バイオ分野のAI活用は「マストピース」

プラチナバイオは、広島大学のゲノム編集研究を基盤に2019年に創業しました。

2020年には、科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に採択され、「バイオDX」をキーコンセプトに、生物のデジタル化(遺伝情報の解読・解析)とプログラミング(ゲノム編集・合成)による研究開発から、生物機能を最大限に発揮し、食・健康・エネルギー等、人類が直面する課題の解決に取組んでいます。

そこから生まれる研究成果の社会実装を推進するため、「ゲノム編集」と、「バイオDX」を事業の二本柱として展開しています。

両事業を支えるのが、DNAやタンパク質などの膨大な生物学的データを、情報科学や統計学を用いてコンピュータで解析する「バイオインフォマティクス」です。バイオDXチームがゲノム情報などを解析して編集対象を特定し、実験結果を再び解析へ反映することで、効率的かつ安全なゲノム編集を実現しています。

少ないデータをもとに予測、「DNA言語モデル」という選択

同社がAIに着目した背景には、ゲノム編集ならではの課題がありました。ゲノム編集にともない、低い確率で意図しない作用が起きてしまう「オフターゲット」の問題です。

プラチナバイオ株式会社
代表取締役CEO
奥原 啓輔 氏

「産業として安全性を確立するには、オフターゲットの予測精度を高める必要があります。しかし、オフターゲットの頻度はとても低く、学習に使えるデータ量を稼ぐのが難しいのです。以前からルールベースでオフターゲットの起こりやすさを予測する手法はありましたが、精度に課題がありました」(中前氏)

この課題に対し、同社は「DNA言語モデル」でアプローチしています。A・T・G・Cからなる大量のDNA配列をAIが事前学習したモデルで、「DNABERT-2」などが知られています。

「DNA言語モデルは事前学習で大量のゲノムデータを学び、一般的なDNAの法則性をある程度つかんでいます。その状態であれば、少ないデータでもタスクの学習が可能になります。バイオインフォマティクスは機械学習を使った予測と相性が良いと考えています」(中前氏)

プラチナバイオ株式会社
研究開発部 バイオDXチーム
チームリーダー
中前 和恭 氏

DNA言語モデルの活用は、予測精度の向上以外にも効果があったそうです。

「DNA言語モデルは、『この配列が機能するなら、まだ確認されていないこの配列も機能するのではないか』という予測ができます。AIから提案された新しい配列を実験で検証し、結果をフィードバックすることで、検証のサイクルをさらに加速できるのです」(奥原氏)

タンパク質の立体構造を予測する「AlphaFold」、タンパク質配列の設計を支援する「ProteinMPNN」といったツール群と組み合わせ、研究と開発、社会実装を高速に進めるためには、GPUを備えた高性能な計算基盤が欠かせません。そのような状況の中で、計算資源の不足が深刻化していきました。

「GPUを必要とするアプリケーションが増え、社内の環境では対応しきれなくなっていました。モデルの深層学習に数日がかりになったり、VRAMの容量不足から処理が止まってしまったりしていました。アカデミア向けスパコンもリソースの奪い合いで、重い処理では時間制限に引っかかってしまっていました」(奥原氏)

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高火力 VRTは「過不足のないGPU環境」だった

さくらインターネットとの接点は、2023年1月にさかのぼります。オープンイノベーション施設「Blooming Camp」を開設する準備をする中で、奥原氏がさくらインターネットの計算資源に着目しました。

「私たちはもともと、牡蠣のゲノム解析などで『さくらのクラウド』を利用していました。さくらのクラウドはデータ転送にコストがかからないため、大きなゲノム情報を扱いやすかったのです」(奥原氏)

プラチナバイオ株式会社
研究開発部 バイオDXチーム
バイオインフォマティシャン
大貫 永輝氏

すでに利用実績があり、運用面での安心感もあった同氏。それに加えて、計算資源の「ちょうどよさ」が導入の決め手になったといいます。

「複数サービスを比較するなかで、高火力 VRTが私たちの事業にちょうどフィットすることがわかりました。『VRAM容量の大きいGPUを1基だけ使いたい』というニーズを満たすサービスがじつは少なかったのです。たとえばH100が4基積まれた大規模並列学習向けのサーバーでは過剰です。しかし、VRAMが小さいうえに2世代近く前のモデルしか選べないサーバーでは力不足。高火力 VRTが、ちょうどその要望を満たしてくれました」(大貫氏)

「導入もスムーズに進められました。立ち上げ時のCUDA設定のマニュアルがわかりやすく、日本語のリファレンスがあるのも助かりますね。AIツールごとに、CUDAやPyTorchの推奨バージョンが細かく分かれていたため、一部のドライバーを更新する必要はありました」(中前氏)

安定稼働が支える研究スピードと、共創で描く未来

導入後はGPUを要する解析の処理速度が大きく向上。従来は数日を要していた深層学習モデルのファインチューニングが約1日で完了し、オフターゲット予測は数時間で終わるようになりました。その中で大貫氏は「処理が途中で止まらない安心感」を強調します。

「VRAM容量が80GBあるため、処理落ちを心配しなくていい点がとてもありがたいです。夜通しかかる処理でも安心して帰宅でき、翌朝には終わっています。精神的な負担が軽減されました」(大貫氏)

一時領域のストレージもフル活用中。ゲノム情報のシーケンスデータは大きいもので100GBを超え、中間生成ファイルも含めると、一つの案件でテラバイト級になることもあるといいます。

「ゲノム情報はとにかく大容量になります。中間ファイルを6TBの一時領域に退避すればシステム領域が圧迫されません。大容量データを扱う解析ではありがたいところです」(大貫氏)

同社が高火力 VRT上で実施したDNA言語モデル(DNABERT-2)のファインチューニングをまとめたプロトコール論文は、2026年4月に生命科学系専門誌「Bio-protocol」へ査読付きで掲載されています。国産の高性能GPUクラウドが、実際の研究成果につながりました。

「社会導入の実例としては、低アレルギー食品をゲノム編集で作り、その品質をゲノム情報で保証するような例が出ています」(奥原氏)

データが少ない世界で精度を高め、まだ見ぬ配列へと探索を広げる。プラチナバイオの挑戦を、国産クラウドの計算基盤がたしかに支えています。

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※掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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プラチナバイオ株式会社
事業内容
バイオテクノロジー
設立
2019年8月30日

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