導入事例

長寿命バッテリーを搭載したソーラーシステムの遠隔監視にsakura.ioを採用

東北大学未来科学技術共同研究センター/ 東和プロネッツ(株)/(株)アイティプロジェクト 様

導入サービス

東北地方を中心に電子機器販売事業を手がける東和プロネッツ株式会社は、東北大学未来科学技術共同研究センターが開発した安全・長寿命のリチウムイオンバッテリーを搭載したオフグリッドソーラーシステム「WONDER POWER STATION」を発売しました。システムユニットを遠隔監視する仕組みには、さくらインターネットが提供するIoTプラットフォームサービス「sakura.io」が採用されています。

課題
ソーラーシステムの異常をいち早く検知する仕組みが必要
ソーラーシステムのバッテリーの改良に活かせるデータを収集したい
効果
システム異常時に迅速な対応ができる体制を構築
バッテリー改良に活かすためのデータの自動収集が可能に

高い安全性・信頼性と低コスト、 長寿命を実現したバッテリー

東北大学 未来科学技術共同研究センター
特任教授 白方 雅人 氏

東北地方を中心に電子機器販売事業を手がける老舗企業の東和プロネッツは、2018年10月にオフグリッドソーラーシステム「WONDER POWER STATION」を発売しました。同製品は、東北大学未来科学技術共同研究センター(NICHe)と県内企業数社で共同開発した独立型太陽光発電・蓄電システムです。
 「WONDER POWER STATIONは、東日本大震災の経験を踏まえ産学連携の成果として誕生した製品。もともとは、NICHeが開発した安全・長寿命のリチウムイオンバッテリーの商用化を目指すための取り組みからスタートしています」と東和プロネッツ 代表取締役社長 目黒一夫氏は話します。
 NICHeでは長年、東北大学特任教授の白方雅人氏が中心となって、低コストかつ多品種・少量生産が可能なリチウムイオンバッテリーの研究・開発に取り組んできました。現在主流となっているコバルト系やニッケル系のリチウムイオンバッテリーは、大容量・高性能であるものの、異常発熱して発火する危険性があります。それに対し、白方氏が研究開発に取り組んできたマンガン系のリチウムイオンバッテリーは安全性・信頼性が非常に高いという特徴があります。
 「リチウムイオンバッテリーには高効率と多様性という特徴がありますが、開発・製造には膨大な設備投資が必要で、安全性の確保も容易ではありません。そこで私たちは、マンガン系のリチウムイオンバッテリーに着目し、安全性・信頼性が高く長寿命のリチウムイオンバッテリーの研究に取り組んできました」(白方氏)

小規模医療機関を支えるソーラーシステムとして製品化

東和プロネッツ株式会社
常務取締役 統括本部長 杉山 孝二 氏

NICHeが新しいリチウムイオンバッテリーの製造技術を確立しこれを応用した製品の一つとしてソーラーシステム用のバッテリーユニットを試作。これに注目したのが、東日本大震災当時に東北大学病院 病院長を務めていた東北大学前総長の里見進氏でした。
「東日本大震災の影響で、大規模病院のような自家発電設備を持たない施設では診察できないという事態に見舞われました。その経験から里見氏は、停電が発生しても電源供給を継続して診療を可能にするソーラーシステムが必要だと訴えました。そこで仙台市医師会の協力を得て実証実験を実施するとともに、まずは小規模な医療機関をターゲットに製品化することにしました」(東和プロネッツ 常務取締役 統括本部長 杉山孝二氏)
 こうして東和プロネッツでは、仙台市内のメーカーに依頼して製品を生産し、同社が総販売元となった「WONDER POWER STATION」が誕生しました。
 「WONDER POWER STATIONは、安全・長寿命のリチウムイオンバッテリーに、最新のソーラー充電技術を組み合わせた製品です。わずか4枚の太陽光パネルで3時間に3.2kWh、曇天・雨天でも十分に充電できるという性能を備えています。非常用としてだけでなく、備蓄電量を設定しながら常時電力供給も可能です」(杉山氏)

セキュアな閉域網とクラウドサービスを一元化したsakura.ioを評価

株式会社アイティプロジェクト
代表取締役 荒木 義彦 氏

WONDER POWER STATIONを製品化するにあたり、NICHeと東和プロネッツは製品の安全性・信頼性をより向上させるために、遠隔による集中監視・管理の仕組みが必要だと考えました。その監視・管理システムの開発を担当したのが、株式会社アイティプロジェクトです。同社の代表取締役 荒木義彦氏は次のように話します。
 「WONDER POWER STATIONでは、ソーラーシステムによる発電量やバッテリーユニットの蓄電量などのセンサーデータを取得・常時監視し、万一異常を検知した場合には迅速に対処する必要があります。また、リチウムイオンバッテリーを開発したNICHeでもバッテリーの改良につながるデータ収集目的に、監視・管理の仕組みを必要としていました。そこで、常時接続が可能なIoTシステムを組み込むことにしました」
 そのIoTシステムとして荒木氏が選定したのが、さくらインターネットが提供するIoTプラットフォームサービス「sakura.io」でした。
 「私は、さくらインターネットが立ち上げた子供向けプログラミング教室を主催する『KidsVenture』にて講師を務めており、そこでプログラミング専用パソコン『IchigoJam』を使っていますが、sakura.ioの通信モジュールにはその互換機『IchigoSoda』が使われています。使い慣れた環境で開発できるのに加え、閉域網を利用できるセキュアな通信環境、データの保存や連携処理に必要なクラウドサービスをすべてまとめて安価に利用できることが決め手となってsakura.ioを採用しました」(荒木氏)

実証実験でも成果を確認

東和プロネッツ株式会社
代表取締役社長 目黒 一夫 氏

WONDER POWER STATIONを実際に設置して行われた実証実験では、すでに成果が得られていると言います。実験に協力した安藤クリニックでは設置してすぐに停電が発生したものの、ソーラーシステムのお陰で診療を継続できたとのことです。
 「WONDER POWER STATIONは、常時、ソーラー充電電力を供給し、商用電源が停電しても給電し続けます。充電量が低下したら商用電源へと自動的に切り換えて、充電量が戻った時点でソーラーに自動復旧します。こうした機能があれば万一の停電時・緊急時でも照明が使えたり、電子カルテが使えたり、処方箋を発行できたりします。これからの医療機関には欠かせない設備になることは間違いありません」と目黒氏は話します。

WONDER POWER STATION内に組み込まれた通信モジュール「IchigoSoda」からセンサーデータを取得し送信

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