クラウド上の仮想ルータを活用して、 見通し良く確実に統合認証システムを運用開始
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学校法人 桜美林学園
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南高梅を原料とした最高品質の梅干しを作り続けている株式会社トノハタ。同社の代表取締役社長 殿畑 雅敏氏は、「紀伊半島や熊野三山、熊野古道をもっと多く方々に知ってもらいたい」という想いから、現地に足を運ばなくても仮想体験で熊野古道を散策できる「紀伊半島・熊野三山をメタバースで巡る ~熊野古道中辺路編~」をテクノブレイブ株式会社の支援のもと、2025年4月にローンチしました。その取り組みの背景やメタバースの概要、今後の展開などを株式会社トノハタ 代表取締役社長 殿畑 雅敏氏、テクノブレイブ株式会社 おもしろビジネス提案局 局長 大塚 伸司氏に詳しく伺いました。
トノハタ 殿畑氏:和歌山県みなべ町は、皮が薄く、種が小さく、果肉がやわらかい梅の最高級ブランド、南高梅(なんこうばい)が誕生した土地です。そんな南部梅林を抱く梅の里で1950年に創業したトノハタは、「日々の食生活を通して、健康を維持していきたい」の考えのもと、南高梅を原料とした最高品質の梅干しを作り続けています。梅干しは「梅はその日の難逃れ」「番茶梅干し医者いらず」などの効能が昔から語り継がれており、1,000年以上も昔から身体に良いモノとして伝えられてきた食材です。私自身、梅干しを食べることで健康になると信じていますから、人生を豊かにしたい、健康になりたいと願う方々に、梅干しを届けていくことが使命だと考えています。
現在はスタンダードな梅干しのほか、無添加梅、減塩梅干、種抜き梅など、お客様のお好みで選べる商品を展開。さらにスイーツやオリーブ漬梅、梅酢など、梅干しに関連する商品も多数ご用意しています。梅干しの素晴らしさを多くの皆様に知っていただけるように、そして、毎日毎食一粒の梅干しが皆様の健康と豊かな生活への一助になれるように、これからも最高の梅干しをつくり続けてまいります。
トノハタ 殿畑氏:和歌山県みなべ町は、南高梅の産地であるとともに、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)を中心とする信仰の聖地、熊野に接する地でもあります。川や滝、巨岩に神が宿るとして崇める自然崇拝が起源の熊野は、古くから人々の熱い信仰に支えられ、平安時代の末には多くの皇族や貴族が「浄土への入り口」としてお参りするようになりました。現代でも熊野三山は「よみがえりの聖地」として信仰を集め、「伊勢へ七度、熊野へ三度」といわれるほど多くの方が参詣にやってきます。なかでも熊野三山へと通じる参詣道であり、霊場・山岳修行の道でもある熊野古道は、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録され、国内外から多くの観光客が訪れています。
そうした地で梅干しづくりに勤しんできましたが、経験を重ねた年齢になってくると、自分が生まれてきたことの意味を考え、地域のことを再認識し、どうしたら地域に貢献できるか、といったことに気持ちが傾くようになってきました。そして心のなかで大きくなっていったのが、もっと大勢の方々にこの地を知ってほしいという想いでした。もちろんすでに多くの方に足を運んでいただいていますが、一方で、熊野三山や熊野古道は知っていても現地に向かうことに高いハードルを感じている方々も大勢いらっしゃると思います。そんな方々に少しでも熊野の魅力を知ってもらいたいという考えから生まれたのが、今回の「紀伊半島・熊野三山をメタバースで巡る ~熊野古道中辺路編~」(以下、熊野三山メタバース)です。
トノハタ 殿畑氏:実は当初、トノハタにおける梅干し事業の集客用にメタバースを考えていました。メタバースを前提に広告代理店の方と技術面や集客の方法について話を進めていくなかで、もともと自分のなかにあった地元への想いが目覚め、事業の集客ではなく、熊野や紀伊半島を紹介する仮想空間に趣旨が変わっていきました。その構想を具体化するお話のなかで広告代理店から紹介されたのがテクノブレイブさんでした。
テクノブレイブ 大塚氏:当社はタイのバンコクに拠点を置く子会社Techno Brave Asia Ltd.と連携し、VR、AR、MR、3DCG先端技術に特化した多数のプロジェクトに参画してきました。そうした実績を評価いただき、今回トノハタ様の取り組みに参画できたことを非常に嬉しく思っています。
テクノブレイブ 大塚氏:当社が「熊野三山メタバース」の開発に携わり始めたのは2024年4月からです。大まかなフレームから細部のつくり込みまで、基本的には殿畑社長のアイデアをベースに制作しました。まずストーリーは、熊野古道の道中にある王子(熊野詣の修験者によって12~13世紀にかけて組織された一郡の神社)を巡りながら、ゴールである熊野本宮大社を参拝するというもの。「熊野三山メタバース」で登場する王子は19箇所あり、アバターを操作しながら王子にたどり着くとリアルな映像を見ることができます。
トノハタ 殿畑氏:仮想空間とはいえ、虚像ばかりでは熊野の魅力は伝わりません。そこで、リアリティを出すため、実際の映像挿入を提案しました。それぞれの王子に行って撮影していただくなど、テクノブレイブさんには大変ご尽力いただきました。おかげさまでバーチャルとリアルの融合を実現できたことに喜びを感じています。
テクノブレイブ 大塚氏:王子には歴史的背景が分かる説明文も入れていますから、すべての王子を回ればかなり詳しくなれると思います。また、王子を巡った証に、地元の学生が描いた特製カードを入手できるゲーム性も盛り込みました。19箇所それぞれにカードを用意していますから、カードを集める楽しみも味わえます。さらに、多様性に富んだアバターやシーンごとに登場する動物といった楽しさも満載。対応デバイスはPCのほか、スマートフォンやタブレットのモバイルでも楽しむことができます。
テクノブレイブ 大塚氏:「熊野三山メタバース」はトノハタ様の事業には直結しないCSR的な取り組みのため、当初より低コストでの開発が大きなテーマでした。そこで提案したのが、おためしクラウドサービス「おたクラ」です。「おたクラ」とは、最小限の期間・コストでスモールスタートが可能な当社独自のサービスです。
今回は、新しくラインアップに加わった「さくらのクラウド」を気軽に利用することができるサービス「おさくら」を提案させていただきました。「おさくら」提案の大きな理由はコストです。3Dの「熊野三山メタバース」は、どうしても回線の負荷が懸念されるため、従量課金の外資系クラウドのプラットフォームを利用した「おたクラ」では、ローンチ後のコストがまったく読めないという課題がありました。その点、「さくらのクラウド」をベースにした「おさくら」は、回線状況に左右されない定額制。 メタバースというコンテンツを考えると、非常にコストパフォーマンスが高いサービスといえます。
トノハタ 殿畑氏:クラウドやインフラの話は正直、何を検討すればいいのか分からないため、すべてテクノブレイブさんにお任せしました。ただ、「熊野三山メタバース」にとって「さくらのクラウド」の定額制は、非常に大きなメリットというのは分かります。そういう意味では、外資系のクラウドに固執しないテクノブレイブさんの柔軟なサービスは、評価に値すると思います。
テクノブレイブ 大塚氏:図の通り、「おさくら」における「熊野三山メタバース」は、仮想サーバー4台、Webサーバー・APIサーバー・Gameサーバー×2台)に、データベースアプライアンス1台、オブジェクトストレージ6バケット、ウェブアクセラレータ4台の構成となります。図の本番環境とは別にテスト環境も用意しました。「おさくら」のベースである「さくらのクラウド」自体は定額制ですから、セキュリティ対策や冗長化、バックアップなどを盛り込んだ構成は、コストバランスを考慮しながら検討することができました。さらに、設定がシンプルで扱いやすく、さくらインターネット社の他サービスと組み合わせが容易な点も評価しています。実際、セキュリティ対策のWAF(Web Application Firewall)もスムーズに導入することができました。
メタバースを構築するプラットフォームにはUnityを用いました。Web上で仮想空間を体験できるUnityのメタバースという点では、今回の「熊野三山メタバース」はかなり画期的だと思います。公式な事例はかなり数が少ないはずですから、「熊野三山メタバース」は胸を張れる取り組みだと自負しています。
トノハタ 殿畑氏:「熊野三山メタバース」をローンチするにあたり、私の評価は何の意味もありません。訪れた方に楽しんでいただき、体験して良かったと思ってもらえることが評価や価値につながっていくと考えています。告知と集客の仕方次第ではありますが、何人訪れたかがKPIであり、定量的な評価といえるのではないでしょうか。
テクノブレイブ 大塚氏:「熊野三山メタバース」のバックエンドにはCMS(Content Management System)もありますから、訪問者数はもちろん、どういう経路でやってきたか、どのキャラクターが人気かなど、ログをもとに解析することができます。それらをKPIにして定量化し、PDCAを回していけば、より多くに人に楽しんでもらえるメタバースになると考えています。
テクノブレイブ 大塚氏:やはり「さくらのクラウド」はコストのメリットが大きいですね。ある企業によると、メタバースの運営に毎月膨大なコストが発生していると聞いています。その点、定額制の「おさくら」はデータ通信料によってコストが跳ね上がることがないので、トノハタ様にとって安心してご利用いただけるかと思います。しかも、Unityの仕組みを活用し、多くのユーザーの同時アクセスにも耐えられる仕様を実現。短期間で爆発的に知名度が上がるような状況が発生しなければ、快適に運用し続けることができます。
また、当社にとっては、Techno Brave Asia Ltd.が何の問題もなく開発を進められたことも大きな発見でした。開発を担当したTechno Brave Asia Ltd.はタイのバンコクが拠点ということもあり、慣れている言語は英語です。そのため、「おさくら」のベースになっている国産クラウド「さくらのクラウド」を扱えるか不安がありました。しかし、いざ蓋を開けてみると、分かりやすい操作性や英語のドキュメントなどにより、戸惑うことなく開発に取り組むことができました。今後メタバース案件を担当する際は、今回の「熊野三山メタバース」を参考に、「おさくら」とメタバースのセット提案ができるのではないかと期待しています。
トノハタ 殿畑氏:安価な「さくらのクラウド」とはいえ、毎月の維持費はかかっていきます。収益はまったく考えていませんが、自費のまま継続的に運営していくことは困難です。この部分に関してはテクノブレイブさんと協議しながら、「熊野三山メタバース」を応援していただく仕組みを早急に実装していく予定です。
「熊野三山メタバース」は、ようやくスタート地点に立ったところです。まずは訪れた方々のさまざまな声をキャッチアップしながら、より良いものにしていきたいですね。そして最終的には、紀伊半島すべてを網羅するメタバースを提供できればと考えています。
テクノブレイブ 大塚氏:当社としては、引き続きトノハタ様の「熊野三山メタバース」を支援してまいります。また、本記事を一読いただき、興味を持ってもらえましたら、ぜひ一度「熊野三山メタバース」にお立ち寄りください。心よりお待ちしています。
「紀伊半島・熊野三山をメタバースで巡る ~熊野古道中辺路編~」:https://www.kumanokodou-meta.jp/